若き日のレイア姫も1カットだけ登場したが、キャリー・フィッシャーが演じたわけではなく、代役とモーションキャプチャー、アーカイブ素材を合成して再現されたデジタル・ドッペルゲンガーだった。『マンダロリアン』での若かりしルーク・スカイウォーカーの登場シーンも、マーク・ハミルの言葉をもとに訓練されたAIが声を担当して実現した。
こうして生まれた「演技」は、予想にたがわず退屈で無気力なものだった。
「AI俳優」に本物の演技はできるか
これまで観客が体験してきたデジタルクローンは、必ずしも魅力的なものではなかった。AI生成された死んだ目をしたトム・ハンクスのレプリカが、たとえば『キャスト・アウェイ』でハンクスが見せたような迫真の演技の半分も再現できるとは想像しがたい。ハンクスもポッドキャストインタビューで、仮想の「AIハンクス」には実物の演技の再現はできないだろうと認めている。しかし同時に、観客がそれに気づくかどうかには疑問を呈し「わかる人にはわかるだろう。それは間違いないが、問題は彼らがそれを気にするかどうかだ」「気にしない人もいるだろうし、区別がつかない人もいるだろう」と語った。
悲しいかな、ハンクスのいう通りかもしれない。CGIのルーク・スカイウォーカーを非常に冷ややかに受け止めた人が多かった一方で、『スター・ウォーズ』ファンの多くはノスタルジーとともに喜んだ。むしろ、『最後のジェダイ』でマーク・ハミル自身が演じたルークへの反発のほうが、ハミルのデジタルクローンに対する反応よりもはるかに否定的だった。
もっとも、『スター・ウォーズ』は特にノスタルジックなファン層を持つシリーズであり、CGIのルークは数分間しか登場しなかった。きっと、どんなに熱狂的なファンでも、デジタル技術で作られたルークの単調な話し方や不気味な笑みをずっと見ているのは難しかっただろう。