実は、コロナ禍後の筆者の初の出国先はモンゴルで、1年前の7月下旬のことだった。というのも、昨年の段階で、外国人観光客の受け入れを早々と解禁した国の1つがモンゴルだったからである。それは2022年3月のことで、あまり知られていない話だと思うが、当時からノービザのモンゴルは日本人にとって最も行きやすい外国だった。
かつて13世紀に世界帝国を築いたモンゴル系の人たちは、今日、メインランドのモンゴル国のほかに、中国内モンゴル自治区とロシアの一部に分かれて住んでいる。これまで中国内モンゴル自治区には何度か訪ねたことがあったが、メインランドに行くのは初めてだった。
中国の内モンゴルの人たちから聞くメインランドの噂は、新しい音楽シーンなどモンゴルの文化トレンドを届けてくれる憧れの場所とされているのが、かねてから気になっていた。彼らがなぜそう考え、両者のどこが違うのか、どんな世界が広がっているのか知りたかった。
一般にモンゴルといえば、草原に羊が群れるのどかな光景を思い浮かべることだろう。それは間違いではないし、実際に草原を訪ねると、その美しさに心洗われたものだ。
その一方で、首都ウランバートルというほとんどこの国で唯一の大都市の持つ面白さは発見だった。今日のモンゴルには草原と都市という2つの顔があるのだ。
そこで、今回は昨夏の短い滞在で垣間見たウランバートルの新しい姿を紹介したい。
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成田からのフライトで約5時間。どこまでも続くモンゴル高原の緑の草原となだらかな丘陵を横目に見ながら、着陸態勢に入ったアエロモンゴリア航空の機体は、2021年7月にオープンしたチンギス・ハーン国際空港にゆるゆると舞い降りた。ウランバートルを歩いた第一印象は、アジアの都市というよりロシアの地方都市にそっくりだったことだ。街はロシア語と同じキリル文字であふれていたし、劇場や大学、政府庁舎など、都市を構成する主要な施設はほぼロシア建築だった。
初めて訪ねた街でついやってみたくなるのが、高い場所にのぼって都市の全景を眺めることだ。ウランバートルにはそんなツーリストの想いをかなえてくれる場所が2つある。
1つは、市街地の南部の丘の上にある「ザイサン・トルゴイ」という戦勝慰霊碑だ。そこからは市内全貌がほぼ見渡せる。