ロシア第2の銀行VTBがイランに事務所を開設し、同国に駐在する初のロシアの銀行となったことがこのほど明らかになったばかりだ。
CBIのモフセン・カリミ国際問題担当副総裁は、ロシアに進出するイランの金融機関名や事務所を開設する時期については言及しなかったが、同国のテレビ、Press TVが報じたコメントでは「少なくとも商業銀行2行がロシアに事務所と支店を開設するニュースを今後発表したい」と明らかにした。「いくつかの良い進展がある」とも述べている。
ロシアとイランの経済関係は、2022年2月のウクライナ侵攻にともなうロシアへの国際社会からの制裁をきっかけに盛んになっている。イランは長い間、米国から制裁を受けており、制限への対応という点ではロシア政府に伝達できるノウハウを持っている。また、ロシアに科された貿易制限の回避を模索して失うものはほとんどない。
他の周辺国の当局もより慎重な対応を迫られてきた。3月下旬にはアラブ首長国連邦の中央銀行がロシアのMTS銀行に1年前に発行したライセンスを取り消した。
また、イラン商工会議所(ICC)は今年後半にロシアに貿易事務所を開設する意向を明らかにし、これは二国間の拡大している貿易のつながりを示している。ロシア・タタールスタン州の州都カザンでこのほど開かれた会合で、ICCのゴラムホセイン・シャフェイ会頭は「ロシアに事務所を構えることは最優先事項だ」と述べ「貿易交流拡大のニーズに応えるため、今年中に開設したい」との考えを示した。
脱ドルの動き
こうした動きは、米ドルを使わない新しい貿易決済システムを開発する取り組みと並行するものだ。CBIのモハマド・レザ・ファージン総裁は1月に、イランとロシアの銀行間で直接通信ができるようになったと発表。両国は昨年7月、それぞれの通貨を使った貿易決済システムを立ち上げ、二国間貿易におけるドルの使用を減らすための対策を講じ始めた。また、別の選択肢として暗号資産を利用することも検討している。
ドルを使った貿易を減らす政策は成功したように見える。ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相は直近のテヘランでの記者会見で、ロシアとイランは現在、二国間の決済の80%をリアルとルーブルで行っていると言及。「自国通貨に切り替えるために意図的に行われた作業は成果を上げている」と 評価した。
また、両国は中国人民元など他の通貨を使った取引の決済についても議論してきた。「我々の銀行はこの方向で動いている」とノヴァク副首相は付け加えた。
金融面でのつながりが深まる一方で、イランはウクライナで戦争を行っているロシアにとって重要な軍事装備の供給国となり、ロシア軍にドローンや弾薬を提供している。また、イランの交通網の整備も進んでいる。ロシアはイランの南北をつなぐインフラを改善する取り組みの一環として、アゼルバイジャンと国境を接するイラン北部のアスタラまでの162キロにわたる貨物鉄道路線整備の支援を行っている。
(forbes.com 原文)