政治

2023.05.21

「走る、隠れる、死んだふり」ロシア兵がドローンの爆弾攻撃から生き残る方法

Getty Images

その映像に映っているのは、パッドが敷かれた体育館の床に仰向けになった兵士、そしてすぐ側にテニスボールを持って立つ笑みを浮かべたトレーナーだ。ドローン爆弾に当たらないようにするレッスン。ドローンから投下される擲弾(てきだん)に見立てたテニスボールをトレーナーが放つと、兵士はすばやく転がり、胎児のような姿勢をとる。寝転んだままの回転は、攻撃にドローンが使われるこの時代にロシア兵が学んでいるサバイバル方法の1つだ。隠れる、走って逃げる、死んだふりをするという選択肢もあるが、どれもまったく当てにならないと新しいガイドにはある。

ウクライナ軍は擲弾を投下するのに3Dプリンターで作られた装置を取り付けた民生用クアッドコプターを多用している。最も使用している擲弾は小型のVog-17だが、時には手榴弾やその他の弾薬を投下することもある。ウクライナは1万人超のドローン操縦士を訓練したと主張しており、中には車両の開いたハッチ小さな壕に爆弾を投下することに非常に熟練している操縦士もいる。ネット上には、ドローン操縦士のロシア軍隊への執拗な攻撃を映した映像が何百とある。

人気軍事ブロガーの「ロシアン・エンジニア」は、部隊によって集められたロシア軍の「みんなの知恵」要約をまとめた。小型ドローンに殺されないための実践的なアドバイスを提供しており、映画『ターミネーター』の終末後のシーンを思わせる、上空からの絶え間ない攻撃にさらされる悲観的な様子が描かれている。

ロシアン・エンジニアによると、最もいい対策は、購入する財政的余裕があればの話だが、対ドローン用ジャミングガンか携帯用「電子戦用スーツケース」だ。ジャミングガンは15万ルーブル(約25万円)、スーツケースは9万ルーブル(15万円)。多くの軍装備と同様、ロシア兵は自腹で買わなければならない。加えて「そうした装置の電波は敵に見つかりやすいことを忘れてはいけない」とロシアン・エンジニアは注意喚起する。ウクライナにはロシア軍の電波をピンポイントで探知する装置がたくさんあり、ドローン妨害電波を出すことで砲撃につながる。

ドローンは爆弾を1つしか搭載しておらず、往々にして複数回にわたって攻撃を行わなければならない。ある操縦士はトラックを破壊するためにドローンを戻して爆弾を再装填するという作業を5回繰り返さなければならなかったが、2回目の攻撃でトラックの乗員は逃走した。また、破壊された建物の周囲にいたロシア兵のグループを始末するのに少なくとも6回の攻撃を要した。このようなドローンの頻繁な飛行は対ドローン防御の欠如を示している。
次ページ > 一番いいのは気づかれないようにすること

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事