500年以上も続くイタリアの名門が、どのように世代を超えて伝統を継承しているのか、紹介しよう。
*編集部註:本記事は「ForbesLife 2014年9月28日号」初出のものを再編集しています。
ガルドーネ・ヴァル・トロンピアはイタリアの丘陵地にある人口1万2000人の堅固な町で、488年にわたりファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ社の、そしてベレッタ一族の本拠地であり続けている。街並みは、アルプス山脈から勢いよく流れるメッラ川が描く弧をなぞるように走る一本の大通り沿いに発展してきた。
高さ9mの石造りのアーチにはめ込まれた立派な錬鉄製の門扉をくぐると、幾何学模様に手入れされた巨大な庭園が開けている。そして、イタリア建築のあらゆる要素が取り入れられた堂々たるたたずまいの石造りの邸宅。ベレッタ一族は、ここにあるオフィスでその帝国を統治している。
ひとつの家族が15世代にもわたって事業の指揮を執り続けるという状況はなかなか想像し難い。ベレッタ社によれば、同社はバルトロメオ・ベレッタが1526年にベネチア共和国の総督から火縄銃用の銃身185本の大口注文を受けたころには、すでに80年ほど事業を営んでいたという。
現在の邸宅は1925年に当時の家長ピエトロ・ベレッタが建てたもので、ベレッタ一族は現在も折に触れてここで暮らしている。具体的には社長兼最高経営責任者(CEO、編集部注:当時。現取締役)を務めるウーゴ・グッサーリ・ベレッタ博士と妻のモニークがそうで、彼らが一族の14代目のトップだ。「ベレッタ家は会社の一部であり、会社はベレッタ家の一部なのです」
一族と事業が共生する屋敷のつくりについてそう語るのは、フランコ・グッサーリ・ベレッタ(50)。ウーゴとモニークの下の息子でベレッタ欧州とベレッタ米国の社長を務める(同注:当時。現ファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ社社長兼CEO)。
「これは、ほかの先祖とともに会社を経営してきた私の大おじたちが理解していた重要な要素のひとつです。一族は多くの時間を会社にささげる必要があります。異国の地で暮らす株主になることはできません。ガルドーネ・ヴァル・トロンピアにいる必要があるのです」(フランコ)