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事業継承

2023.05.28 11:00

500年15世代で続く強化策 銃器の老舗ベレッタ一族の家訓とは

ガルドーネ・ヴァル・トロンピアの邸宅の玄関先で。右から15代目の社長兼最高経営責任者(CEO)フランコ・グッサーリ・ベレッタと妻のウンベルタ・ニュッティ・ベレッタ、息子のカルロ。ウンベルタはミラノの慈善事業界で活動し、イタリアのファッション誌のページも飾る。

家族企業は人間くさい。義理人情が連帯感を生むこともあれば、エゴやインセンティブをめぐって衝突することも。家業を守るのは簡単なことではない。

500年以上も続くイタリアの名門が、どのように世代を超えて伝統を継承しているのか、紹介しよう。


*編集部註:本記事は「ForbesLife 2014年9月28日号」初出のものを再編集しています。

ガルドーネ・ヴァル・トロンピアはイタリアの丘陵地にある人口1万2000人の堅固な町で、488年にわたりファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ社の、そしてベレッタ一族の本拠地であり続けている。街並みは、アルプス山脈から勢いよく流れるメッラ川が描く弧をなぞるように走る一本の大通り沿いに発展してきた。

高さ9mの石造りのアーチにはめ込まれた立派な錬鉄製の門扉をくぐると、幾何学模様に手入れされた巨大な庭園が開けている。そして、イタリア建築のあらゆる要素が取り入れられた堂々たるたたずまいの石造りの邸宅。ベレッタ一族は、ここにあるオフィスでその帝国を統治している。

ひとつの家族が15世代にもわたって事業の指揮を執り続けるという状況はなかなか想像し難い。ベレッタ社によれば、同社はバルトロメオ・ベレッタが1526年にベネチア共和国の総督から火縄銃用の銃身185本の大口注文を受けたころには、すでに80年ほど事業を営んでいたという。
ベレッタ家のコレ クションを展示する博物館。19 世紀に建てられた建物で、ベレッ タ社の製品に限らず、アンティー クの銃からマシンガンまで過去数 百年のさまざまな銃器が展示さ れている。

ベレッタ家のコレクションを展示する博物館。19世紀に建てられた建物で、ベレッタ社の製品に限らず、アンティークの銃からマシンガンまで過去数百年のさまざまな銃器が展示されている。


現在の邸宅は1925年に当時の家長ピエトロ・ベレッタが建てたもので、ベレッタ一族は現在も折に触れてここで暮らしている。具体的には社長兼最高経営責任者(CEO、編集部注:当時。現取締役)を務めるウーゴ・グッサーリ・ベレッタ博士と妻のモニークがそうで、彼らが一族の14代目のトップだ。「ベレッタ家は会社の一部であり、会社はベレッタ家の一部なのです」

一族と事業が共生する屋敷のつくりについてそう語るのは、フランコ・グッサーリ・ベレッタ(50)。ウーゴとモニークの下の息子でベレッタ欧州とベレッタ米国の社長を務める(同注:当時。現ファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ社社長兼CEO)。

「これは、ほかの先祖とともに会社を経営してきた私の大おじたちが理解していた重要な要素のひとつです。一族は多くの時間を会社にささげる必要があります。異国の地で暮らす株主になることはできません。ガルドーネ・ヴァル・トロンピアにいる必要があるのです」(フランコ)
工場で職人と語らうウーゴ・ グッサーリ・ベレッタ(左)とピ エトロ(右)。ウーゴは一族の14 代目の社長兼CEOを務め、自社 製品の米国陸軍装備への採用を 実現させ、アパレルやインテリア 商品へと事業を拡大するなど大 きな実績を残し、2015年にその 地位をフランコに譲った。ピエト ロはベレッタ・ホールディングの CEOを務め、スポーツ産業、ア パレル、電子光学など32の企業 の経営に直接的あるいは間接的 に携わる。

工場で職人と語らうウーゴ・グッサーリ・ベレッタ(左)とピエトロ(右)。ウーゴは一族の14代目の社長兼CEOを務め、自社製品の米国陸軍装備への採用を実現させ、アパレルやインテリア商品へと事業を拡大するなど大きな実績を残し、2015年にその地位をフランコに譲った。ピエトロはベレッタ・ホールディングのCEOを務め、スポーツ産業、アパレル、電子光学など32の企業の経営に直接的あるいは間接的に携わる。


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文=ガイ・マーティン 写真=フルビオ・マイアーニ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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