先駆者のGoogleは、というと対話型AIサービスであるGoogle Bardをテスト出荷したものの、ChatGPTの機能をそう簡単には超えられないことが分かり、株価が一気に下がり、世界中の投資家の落胆を集めたことは、記憶に新しいと思います。
そこで一歩引いて見た時に、果たしてAIの未来には、どんな世界が展開されるのでしょうか?「コンピュータを作った天才は、この現象をどう見ている?」「AIは、果たして人間の能力を超えられる?」という2点に絞って解説して参ります。
経営者の心を瞬時に掴み、これほど高揚させているAIを、あるひとりの天才の視点から俯瞰的に見つつ、これからのAIと社会の在り方について考えた時、人間の本質と底力が見えてきました。
連続45日勤務後の天才エンジニアが休日にしたこと
AIについて考えた時、今でも忘れられない光景が浮かびます。それは、2018年12月のこと。アップル創業者のひとりであり、アップルコンピュータを作った天才=スティーブ・ウォズアニック(以下、ウォズ)。世界に最も影響を与えたと言われるコンピュータ・エンジニアにしてアップル創業者のひとりである彼と、YouTube創始者のひとり=チャド・ハーリーを日本に招致して、東京と福岡で経営者向けの大型イベントが開催されたことがありました。私は、外国人ゲスト招聘の窓口をしていた関係で、ウォズとチャドへの単独インタビューの実施や、移動時間も含めて3日間一緒にいられるという非常にラッキーな立場にいました。当時、ウォズは67歳。福岡でのイベントが終わった時点で、中国から東京、そして福岡での仕事と、なんと連続45日勤務という激務のタイミングでした。普通の人なら、体力気力共に疲労困憊していて、仕事から一刻も早く解放されたいと思うはず。
ところがウォズは、期間中ずっと、私の前でコンピュータを触って仕事し続けていたのです。その前日に「明日は、46日振りのお休みだ〜」と言っていたのもかかわらず、楽しげにコンピュータを触っている彼の行動を目の当たりにして「この人は、本当にコンピュータが好きなんだな」と感動を覚えました。
「私はお金持ちになりたいわけではなくて、笑顔で幸せでいることが一番大切なんだよ」と言った言葉も印象的でした。そのようなウォズが、AIをどう見ているのか、どう考えているのかについて語ったお話を今回は共有させて頂きたいと思います。