「カナダより米国に親近感をもっている。自由があるし、憲法もちゃんとしてるし、全体として共和制の仕組みになっているから。この国は君主制だが、これは独裁制を別の名前で呼んでいるだけだ」。団体の関係者は匿名でFOXにそう語っている。
この団体「アルバータ51プロジェクト」は2022年に設立された。新型コロナウイルス感染症をめぐるカナダ政府の制限措置への反発が設立の背景にあるとみられる。同年7月、「カナダ中央部にアルバータ州民の生活と事業の支配を許している議会の不均衡」への反対を表明し、アルバータ州の分離を呼びかけた。
アルバータ51のFacebook(フェイスブック)のメンバーは記事執筆時点で67人、Twitter(ツイッター)のフォロワーは74人しかいない。ただ、最近は米国の右派メディアなどでも、昔からあった分離運動が再燃したものとして注目されるようになっていた。ロッキー山脈の東に位置するアルバータ州は石油が豊富で、非常に保守的な土地柄で知られ、その周辺の米カナダ国境を引き直す動きは以前からあった。
FOXは16日のオンライン記事でアルバータ51をとり上げた。記事には、カナダのジャスティン・トルドー首相が2022年2月、トラック運転手による抗議デモを鎮めるため、緊急事態法の発動を決めたことを非難したFOXの番組「The Five」の動画も貼られている。デモ隊は幹線道路を占拠したり、米国への橋や国境検問所を封鎖したりしていた。
「フリーダム・コンボイ」と呼ばれるこのデモは、米国との国境を行き来するトラック運転手に対して、カナダ政府が新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種を義務づけたことへの反発から始まった。アルバータ51の関係者は、トルドーが緊急事態法の発動によってデモ参加者の銀行口座を凍結できるようにしたことを例に挙げつつ、カナダ政府による「権威主義的な性格を強める方策」に団体は反対していると説明している。口座凍結は2022年2月中に解除されている。