他部署からの「受注」の例
以下、「受注」した例をいくつかお話ししますね。1.海外事業部のフィリピン出店に際して
たとえば、海外事業部がフィリピンに新しい店を出すことになった場合にも「受注」しましたね。その新店の中で、「コスメ」と「食」にフォーカスをあてたショップを運営することは決まっていたものの、「フィリピン、とりわけマニラの人たちのコスメに対する意識の具体的なイメージがほしい、調べてほしい」というのです。もちろん、ある程度の「仮説」があるので、その仮説に端を発した検索キーワードを使って、より深堀りして検証していく、現場担当者が上長を説得できるようなデータも出していきました。2.店舗レイヤーの「中分類」デザインに際して
よく見られる百貨店のフロア構成としては、1階は雑貨や化粧品、中間に婦人服や紳士服、その上にリビング、インテリア、最上階にレストランがあります。これは、「衣食住」で分けた鉄板の大分類ですよね。でも、実はこの大分類の下位にさらにブレイクダウンした「中分類」があります。たとえば、婦人服の「中分類」だと、「年齢」を使うのが常套手段です。
ところが、これまでの伝統的な中分類の区切り方以外の考え方を検討している他部署からの「受注」がありました。その部署ではすでに新しい中分類のカテゴリーをある程度考えていて、実装のために上司を説得したい、という意図もあったようです。
その「受注」を受けて調べたテーマの一つとして、Statistaでファッションカテゴリーの順位と年間平均購入回数を調べ、ドッキングさせて少し編集したものがこのインフォグラフィックです。
東アジアのファッションマーケットのデータなのですが、インバウンドの市場が拡大してきた昨今、「中国 x Z世代(+アルファ世代)」に「百貨店」をどうやったら選んでもらえるか?そしてもっとも好まれるファッションブランドは何か、というのは、日本の百貨店業界でも興味の集まるところだからです。
調査前の私自身の仮説としては、人気のトップはなんといってもラグジュアリーブランドだろう、という思い込みがありました。ところがラグジュアリーブランドは驚きの「低シェア」。
逆にストリートブランドが人気で、なんといっても、日本のバイヤーはまだあまり買い付けていない中国国内のブランドのシェアが20%程度もあり、年間平均購入回数はトップだったのが予想外でした。
その他、新規事業のシーズから──
新規事業の「シーズ」が10個以上あった当時は、事業リーダーから進出を検討している市場の他社、とくに海外事例を調べてほしい、といった「受注」もありました。他部署であったとしても阿吽の呼吸でニーズにこたえる推察力と、依頼することの手軽さが、社内シンクタンクの強みだと思います。
堀氏のお話、会場の多くの方が頷いておられました。データを武器にした「斬り込み隊長」がもっともっと増えて、日本企業の底力になっていくと良いなと思いました。生成AIは私たちのビジネスの責任を取ってくれません。データがあればこそ、自分のKKD(勘と経験と度胸)の価値が上がるのだと思った瞬間でした。