「この人優秀だな」と感じた最後の質問
私:「では、こちらからお聞きしたいことは以上ですが、なにかご質問はありますか?」応募者:「はい。差し支えなければ若干立ち入ったことをお聞きしたいのですが」
私:「どうぞ」
応募者:「面接官の皆さんは、入社してどのくらいですか」
面接官Aさん:「12年です」
面接官Bさん:「8年です」
応募者:「ありがとうございます。Aさんは勤続12年ということですが、この仕事をなぜ12年も続けてこれたのですか?」
なるほど、と思った。これはいい質問だ。
これで上司になるかもしれない社員のレベルもわかるし、何に価値観をおいているかもわかる。いわば面接中に社員訪問をしているのと同じ効果が得られるということだ。
Aさんは聞かれたことについて、結構考え込んでいた。「確かになぜ12年もこの会社にいるのか……良い質問ですね」
しばらく考えて、Aさんはこう言った。「私は、社長が好きだからです」
応募者の方は、それに対して「なるほど、どんなところが好きなのですか?」とまた質問をする。しばらくAさんと受け答えして、Bさんにもおなじ質問をしていた。
つまり「自分が入ろうとしている会社の、現場の声を集めた」ということだ。私を含め面接官全員がこの応募者に対し「優秀だな」と感じた。
なぜなら、コンサルタントという仕事は、経営者のみならず、現場の社員の意見を聞く場面が非常に多いからだ。
コンサルタントの仕事を「解決策を提案する仕事」と思っている人も多いが、そのために現場の声を聞くことは非常に重要な仕事なのだ。「聞くこと」がコンサルタントの仕事の本質だと言っても過言ではない。優秀なコンサルタントは間違いなく「聞く力」に長けていた。
この応募者は我々面接官に「コンサルタントとして現場の声を聞く姿」を想像させた。部外者であるコンサルタントは、その企業のほぼ初対面の社員に、立ち入った質問をする必要があるのだ。
我々は、この応募者が入社後にコンサルタントとして活躍するイメージができたのである。
これから面接を受ける人は、ぜひ「最後の質問」まで力を抜かないで、もし自分がその企業に入社したことをイメージしながら質問してみてほしい。もちろん、上記の質問は、コンサル以外の面接でも通用するだろう。
ちなみに、この応募者にすぐに内定を出したが、後日辞退の連絡がきた。面接官もまた応募者に判断される側の立場なのである。
安達裕哉(あだち・ゆうや)◎ティネクト 代表取締役。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。Twitter:@Books_Apps
本稿はDIAMOND onlineからの転載である。