──「学歴が良い」からといって仕事ができるわけではない、のは想像に難しくない。とはいえ「学歴」が必要ないわけではない。では、採用面接において、仕事ができる人、そうでない人をどのように見分けるのか? 安達氏はコンサルティング会社で中途採用の面接官を何度も務めた経験から、「高学歴なのに落ちる人」「高卒でも受かる人」には決定的な差があったと言う。
以下、同署から一部を転載する。
電話営業の極意は「コンビニの店長をターゲットに」「興奮して話せ」?
中途採用にあたって私がいたコンサルティング会社では「学歴」をさほど重視していませんでした。あるとき、「高卒」の応募者がいました。彼は、高校卒業後「自動車整備工」になり、その後「金融業の電話営業・飛び込み営業職」に転職。そこから、「漁師」になるという変わった経歴の持ち主でした。何が強みかわからず、普通であれば書類選考で落とされてしまうこともある経歴です。
しかし我々は彼を面接に呼びました。学歴ではなく、既存の社員にはない経歴を貴重だと思ったからです。
しかも電話営業の最前線で働いたことのある人は、コミュニケーション能力に優れているのではないかという期待もありました。
そして彼は採用されました。面接で、彼の地頭の良さを十分に感じたからです。
例えば「電話営業のポイントはなんだったのですか?」という問いに対して、
通常であれば「とにかく数をこなすことです」とか「ゆっくり話すことです」といった、当たり障りのない言葉が返ってくることが多いでしょう。
ところが彼は「とにかくコンビニの店長とかファミレスの店長などのターゲットを狙うこと。あとは電話で興奮して話せ!です」と具体的に答えました。
そして、「手を受話器にガムテープでくくりつけられたこともあります。仕事が終わっても手に受話器がついている感覚が消えなくて、電話がどこかでなったら手を耳にあててました。手に受話器ついてないのに(笑)」とユーモアも交えて答え、それを実演してみせたのです。
その他にも、漁師の生き様や飛び込み営業の苦労などを面白く話してみせた彼に、我々は面接を大いに楽しむことができました。
彼のコンサルタントとしての業務経験の貧しさは訓練でなんとかなる、面接官は皆そう思いました。その見立ては間違っておらず、彼はその後、会社に大きな貢献を残し「支社長」まで努めることになりました。