高学歴でも落ちる人のある「特徴」
一方で、いわゆる東大のような学歴の高い応募者が面接に落ちることもよくありました。学歴が高くても採用がもらえない人の特徴を、ひとつあげるなら……「正しい答えばかり話す」です。
高卒で元漁師の彼は、面接官を楽しませるコミュニケーション能力が備わっていると判断されました。面接はコミュニケーションする場です。受験と違って、正しい答えを披露する場ではありません。
人の話を真剣に聞くのは非常にエネルギーを要します。
面接官は1日に何人もの応募者を面接することが多いです。自分のやるべき仕事が山ほどあるなかで面接に駆り出されたり、ときには休日返上で面接官を務めることもあります。その中で、就活対策本に書いてあるようなことを話されてもあまり「この人の話をもっと聞きたい」となりません。
間違ったことを言っているわけではなくても、あまり記憶に残らないので、「採用する理由」にならないのです。
相手を楽しませるのはコミュニケーション能力がないとできません。
コミュニケーション能力とは言い換えるなら、「他者の思考を読み、信頼を得て、他者を動かす能力」です。
「地頭の良さ」もこれと同義だと思っています。
これは、コンサルティングにもマーケティングにも営業にもどの職種にも通づる能力であり、芸能やビジネスの世界で「お笑い芸人」がこれだけ活躍するのを考えても、世の中を生き抜く上で最も大事な能力と言っても過言ではないでしょう。
高卒の彼は、面接官の心情を想像しながら、我々面接官と会話を楽しみ、面接官に「もっと聞きたい」「一緒に仕事したい」と思わせました。面接官を楽しませるといっても、ギャグのような笑えることをしなければいけないわけでは、もちろんありません。
これから面接に挑む人は、自己アピールではなく、面接官とどう会話を楽しむかを考えてみてはいかがでしょうか?
安達裕哉(あだち・ゆうや)◎ティネクト 代表取締役。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。Twitter:@Books_Apps
本稿は DIAMOND online からの転載である。