いつも選択に追われていると、人生の幸福度は大きく下がってしまう
選択という行為は、つねに2つのコスト(費用)を発生させる。
ひとつは認知能力を消費すること、すなわち処理コストだ。脳は大量のエネルギーを消費する臓器なので、デフォルトは「できるだけ考えない」ように設定されている。選択するためにはこの設定を意識的に切り替えなくてはならず、そのたびに処理コストが発生する。多くのトレードオフに直面し、つねに選択していると、脳は疲れ果ててしまうのだ。
もうひとつは、「なにかを選べばなにかを失うこと」で、これは機会費用と呼ばれる。財布に100円しかないという資源制約下では、リンゴを選べばミカンを食べる機会を失ってしまう(あるいはその逆)。
このようにトレードオフでは、つねに機会費用が発生する。「よい選択」とは処理コストと機会費用を最小化することで、選択のコストをゼロにすることは原理的に不可能だ。
このように考えると、成功にとって重要な原則が導き出せる。
選択をする必要が少なければ少ないほど、人生はよりゆたかになる
選択のコスト(処理コストと機会費用)が減ればリターンはその分だけ増えるのだから、これは当たり前の話でもある。そのリターン(資源)をより重要な選択に投じることで、社会的・経済的に成功し、人生はよりゆたかになる。逆に、いつも選択に追われていると、人生の幸福度は大きく下がってしまうだろう。お金持ちになれば選択に迷うことは減る
合理的に考えれば、リンゴとミカンのトレードオフを軽減する賢い方法は、同じ悩みを抱えている買い物客を見つけて、一方がリンゴを、もう一方がミカンを買ったうえで、それを半分ずつ分け合うことだ。これで当初の望みどおり、リンゴとミカンを両方食べることができる。
しかし、それよりずっと簡単で効果的な方法がある。それは、財布に200円入れて買い物に行くことだ。これで資源制約は解消し、選択の必要もなくなる。
ここから、次の身も蓋もない原則が導ける。