マスクは5月15日夜に突然、「ソロスを見ているとマグニート(マーベルのコミックに登場するユダヤ人の悪役)を思い出す」とツイートした。その直後にマスクのフォロワーが、ソロスとマグニートらが2人ともホロコーストの生存者であることを指摘し、投資家で慈善活動家であるソロスが、政治的に意見が合わない人々から彼の「善意」を批判されていると返信した。
マスクはこのコメントに対し、ソロスには善意がなく、「文明を侵食したがっている」と述べ、「ソロスは人類を憎んでいる」と主張した。極右グループは以前から、「新型コロナウイルスを世界に広めた黒幕はソロスだ」といった陰謀論を唱えている。
マスクの今回の発言は、彼が反ユダヤ主義的な表現を繰り返していると非難する人々から即座に反発を受けた。
国連で表現の自由に関する特別報告者を務めたデビット・ケイは、「マスクの支配下にあるツイッターは様々なものをもたらす。言論の自由の小学生版や、政府の要求に直面しての口論、ソロスをネタにした反ユダヤ主義、憲法修正第2条の過激主義などだ。そして、それがまさに彼のアカウントだ」とツイートした。
マスクは、何がきっかけでソロスを攻撃したのかを説明していないが、今回のツイートはソロスの投資会社が米証券取引委員会(SEC)への提出書類で、テスラ株を売却したことを明かした数日後のものだ。ソロス・ファンド・マネジメントは以前、1600万ドル(約22億円)相当のテスラ株を保有していたが、今年の第1四半期にそのすべてを売却した。
陰謀論の標的になるソロス
しかし、同社のポートフォリオから消えた銘柄はテスラだけでない。ライバルの電気自動車(EV)メーカーであるRivian(リビアン)や、Alphabet(アルファベット)やAmazon(アマゾン)などのハイテク企業の株も売却した。ソロスはここ数年、民主党の政治家やその他の進歩的な団体に盛んに寄付を行っており、右派の陰謀論の標的となっている。
3月末のインタビューでソロスは、トランプ前大統領が元ポルノ女優へ「口止め料」を払った問題をめぐり起訴されたことを受け、共和党支持の極右グループが唱えた陰謀論を否定した。ソロスは、口止め料の捜査を指揮したマンハッタン地方検事のアルヴィン・ブラッグが彼の支援を受けているという主張を否定した。
マスクが15日に行った物議を醸すツイートは、ソロスに関連したものだけではない。彼は、政治評論家のリチャード・ハナニアが投稿した「より多くの黒人を厳しく取り締まり、監視し、投獄する」ことを呼びかけるブログ記事のツイートに対して、「興味深い」と返信している。
(forbes.com 原文)