ロボット稲作の最前線 ドローンがモミを捲き、鳥ロボが雑草を抑える

プレスリリースより

耕作放棄地などの比較的小規模な水田をロボット技術で省力化し、有効活用する試みが始まりました。そこでは、鳥の形をした雑草抑制ロボットが「群れ」で泳ぎ回るのどかな光景が見られます。

医療、建築、災害レスキューなどで活躍する実用ロボット「ワークロイド」を開発し提供しているテムザックは、泳ぎ回ることで泥を巻き上げて太陽光を遮り、水中の雑草の生育を阻害する雑草抑制ロボット「雷鳥1号」を開発、宮崎県延岡市にて稲作の省力化実験を開始しました。米粉用の稲の栽培に挑みます。

この実験では、まず苗を育てて田植えをするという従来農法とは異なり、モミをドローンで直接水田にまく直まき農法が使われます。モミの直まきは、植え付けの手間とコストを大幅に軽減できるとして全国で研究されていますが課題も多く、まだあまり普及していません。そのひとつに、種が浮き上がってうまく根が張れず、稲が立ち枯れしてしまう問題があります。水を張る前に土中に種を植える方法などが試されていますが、この実証実験では、種に鉄粉をコーティングして重量を増し、泥に沈み込ませる方式を採用しています。

稲が育つと雷鳥1号の出番です。複数台を連携させて遠隔操作し、田んぼの隅々まで攪拌する「群ロボット制御」を行います。雷鳥1号は太陽光発電で航行できますが、曇りの日はバッテリーで動くこともできます。小型軽量なので、田んぼの広さに応じて台数を調整して効率的に運用できるのが特徴です。

また、センサーを配置して水温や水位を監視し、遠隔で調整できるようにします。来年には、植えつけ前の土の耕起と収穫に「雷鳥2号」を投入して自動化を進める予定です。こうした省力化農業を推進するために、テムザックは延岡市北浦農業公社と連携協定を結び、この4月には同地にアグリ研究所を開設しました。

農林水産省の調べでは、2020年時点で米農家の平均年齢は75歳以上。耕作放棄地も全国で約42万ヘクタールにものぼると言われています。テムザックは、多くのスマート農業が収穫の最大化に焦点を当てているのに対して、耕作放棄地を活用した手間をかけない「ワークロイド農業」で、「従来の収穫量の7割でも確保できれば」という考えで臨んでいます。これがむしろ、小規模農家が多い日本の農業にマッチするのかもしれません。小さな水田を雷鳥1号が泳ぎ回る姿が日本の農村の風物詩になると楽しいですね。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

ForbesBrandVoice

人気記事