原作のアニメが好きな方にとっては、エヴァのイメージを良くも悪くも壊す作品になっているかなと思います。
ですが、私たちは決して壊しにいっているわけではなく、「エヴァンゲリオン」というプラットフォームの中で、どんな新しいものがつくれるかを日々試行錯誤して本気で舞台をつくっています。
その挑戦を観に来ていただきたいなと思います。
——2019年の「30 UNDER 30 JAPAN」受賞時には、「今後3年で成し遂げたいこと」として「海外でいろんな国の人と仕事をしていたい」と掲げていました。その後コロナ禍に突入してしまいましたが、現在も海外での活動は目標のひとつでしょうか。
「いろんな国の人と仕事をしたい」という点は、いまもそう思います。活動する場所については、どうしても海外というわけではなくなりました。実際に今も、日本にいながらラルビさんと仕事ができていますし。
また、当時よりも、日本に昔からある精神性や文化に惹かれている気がします。
その背景には、海外作品特有の難しさがあります。例えば「ハリウッドに行きたい」と思っても、今のハリウッドではアジア人、特に日本人が主演の作品はほぼ制作されません。日本人が出てきたとしても、忍者や着物を着た人というステレオタイプな役が依然として多いと思います。
もちろん海外でそうした役にチャレンジすることで、面白い面もあると思いますが、「日本人はこうだろう」と片づけられてしまっている感があって、どうしても自分は心が惹かれないんです。
私はもっと自分のカルチャーにリスペクトを持ってくれる人と仕事がしたいですし、そのためにまずはきちんと自分や自分のルーツがある国のことを知っていないといけないなと思うようになりました。だから今は、日本のことを“知りたい時期”という感じですね。
——実際に勉強していることはありますか?
ひとつは日本語です。改めて日本語の成り立ちを学ぶと、日本語にはいろいろな情報が詰まっていることが分かります。私は言葉を扱う仕事でもあるので、もっとうまく使えるようになったら幅が広がりそうだなと思っています。
あと、これは趣味の範囲ですが、琉球舞踊を習い始めました。琉球王国時代から受け継がれる沖縄の伝統文化を感じることができて、ものすごく奥が深いんです。
◤30U30 AIUMNI INTERVIEW◢
「女優・石橋静河」
#1 「誰かの人生を演じるために、まず自分自身をちゃんと生きる」 女優・石橋静河の現在地
#2 境界線を壊す。石橋静河、舞台「エヴァンゲリオン ビヨンド」での挑戦