多様な作品で培った表現力を武器に、5月6日からは東急歌舞伎町タワーの新劇場「THEATER MILANO-Za」のこけら落とし公演『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』に出演している。同作はアニメ「エヴァンゲリオン」をもとにした完全オリジナルストーリーで、世界的な振付家シディ・ラルビ・シェルカウイが原案・構成・演出・振付を手がけた注目作だ。
作品で描かれるのは、壊滅的な状況になった地球と生き残った人々。謎の敵「使徒」に対抗するために、少年少女たちがエヴァンゲリオンに搭乗する——。主演は窪田正孝、石橋は特務機関「メンシュ」の現場指揮官として、少年少女たちと最高司令官との間で葛藤する霧生イオリを演じている。コンテンポラリーダンスを取り入れたシーンも見どころだ。
多くのエヴァンゲリオンファンが期待を寄せるこの舞台に、石橋はどのような思いで挑んでいるのか。稽古場で話を聞いた。
前編>>「誰かの人生を演じるために、まず自分自身をちゃんと生きる」 女優・石橋静河の現在地
——1995年にスタートしたアニメ「エヴァンゲリオン」は、今もなお多くのファンを抱える作品です。これまでにも漫画版や劇場版など多くの作品が生み出され、「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」にも注目が集まっています。オファーを受けたときはどのような気持ちでしたか。
私は今回のオファーをいただくまでエヴァンゲリオンを観たことがなかったのですが、もちろん作品の名前や人気ぶりは知っていて。「これは重大なお仕事じゃないかな」と思い、「やりたい」と即答はできませんでした。
結果的に引き受ける決断をしたのは、シディ・ラルビ・シェルカウイさんの存在が大きかったです。ラルビさんは、私がコンテンポラリーダンスを志したときから、ずっと一緒に仕事をしたいなと思っていた方でした。
私がお芝居の仕事を始めたことで、もうその夢は叶わないかもと諦めていましたが、役者としてラルビさんと仕事ができるというありがたいご縁をいただき、挑戦したいと思いました。
——念願のラルビ氏のもとでの稽古。彼から学んだことはありますか。
ラルビさんは、ジャンル分けやカテゴライズというものを嫌い、その境界線をどれだけ壊せるかに強いこだわりがある方だと思います。
日本は特に「何歳だからこうだよね」「こういう格好をしているからこういう人だよね」というのが強い文化です。みんな良くも悪くもそういう環境のもとで育ってきているから、境界線を外すのはなかなか簡単じゃない。そもそも自分自身が何らかのジャンルに分けて見られることに対して、疑問を持ったことがない人もいるかもしれません。
今回、ラルビさんのもとでは、自分でも無意識に思ってしまっている「こうあるべき」をとっぱらって新しい可能性を見つけていくような作品づくりをしています。それが難しさでもあり、挑戦になっています。