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2023.05.16

誰が描いたかが大切だから、イラストが得意な主婦がiPadで突如まんが家に

夫であるマシンガンズ・滝沢秀一の書籍『ゴミ清掃員の日常』のまんがを担当した滝沢友紀さん

イラスト、デザイン、設計から音楽制作まで、iPadで仕事をするプロは珍しくなくなった。さらに現在、制作とは無縁だった人がiPadを使ってプロになるケースも増えてきているという。『ゴミ清掃員の日常』でまんがを担当し、まんが家デビューを果たした滝沢友紀さんもそんな1人だ。

滝沢友紀さんの夫は、お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんだ。秀一さんは1998年にお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。安定収入を得るために、ゴミ収集会社にも就職したが、独自の視点でゴミ清掃員の日常を切り取ったTwitterに注目が集まった。2018年にはゴミ収集員としての体験を綴ったエッセイ『このゴミは収集できません』を出版しベストセラーになった。現在は「清掃芸人」としてテレビやラジオ、講演会などさまざまな舞台で活躍している。

友紀さんは、秀一さんのエッセイのコミック版『ゴミ清掃員の日常』と『ゴミ清掃員の日常ミライ編』で作画を担当した。

「エッセイマンガは、誰が描いているかが重要。だから最初は滝沢秀一さん本人に、下手でもいいから描いてと依頼したのですが、本当に下手で……(笑)。どうしたものかと思っていたら、妻はどうでしょうと提案されたんです」と出版元である講談社の塩田将也さんはいう。



依頼されたとき、友紀さんは48歳。子育て中で、歯科医院の受付もしていた。昔からイラストは得意だったが、本格的な創作活動をしたことはなく、飼っている猫の絵や家族向けのメッセージで似顔絵を描いたりするていどの素人だった。そんな状況だったが、夫婦合作は話題になるだろうという編集者の意図と、家計のためにも2人でやりたいという夫婦の意志もあり、友紀さんはまんがを描くことにした。

「普段は考えてから決めるタイプで怖がりなのですが、そのときは思わず『やってみようかな』と言っていました。人生で一度もまんがを描いたことがなかったので、大きなチャレンジでしたね」

デジタルだからこそできた

ネームは編集者の塩田さんと夫の秀一さんが、夜な夜な打ち合わせてつくった。友紀さんはそれを元にまんがを描く。初心者である友紀さんの制作ツールは、12.9インチの大きなiPad Proだ。それまでiPadに触ったことがなかった友紀さんは、知人から3時間の基礎講習を受けたが、いざ始めようとすると、わからないことだらけでとまどったという。
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編集=安井克至

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