日本の金融規制当局は、2つの大規模な取引所のハッキングを受けて、厳格なルールを導入し、今ではブロックチェーン技術を基盤としたWeb3分野のリーダーになることを目指している。対照的に、米国はイノベーションには寛容だが、統一された規則が存在しないことで業界に混乱が生じ、国家的な戦略の立案に支障をきたしている。
日本は、2014年のマウントゴックスのハッキング事件を通じて、この分野の規制の重要性をいち早く学んだ。その4年後に、暗号資産取引所のコインチェックは、約580億円相当のNEMコインを奪われた。
「日本は、FTXの破綻で米国が直面したような混乱を回避できた」と、ワシントンD.C.を拠点に世界の暗号資産業界を支援する団体クリプト・カウンシル・フォー・イノベーションのCEOのシーラ・ウォーレンは指摘する。
マウントゴックスとコインチェックの騒動を受けて、日本の金融庁は取引所に対する規制を強化した。そこには次のようなルールが盛り込まれている。
・顧客の資産と運営元の資産は別々に保管し、年次監査で保有状況の確認を義務付ける
・レバレッジ取引において、投資家は投資額の2倍以上の資金を借り入れてはならない(バイナンスを含む多くの取引所では、100倍ものレバレッジで取引することが可能だ)
・取引所は、顧客資金の95%以上をインターネットに接続されていないコールドウォレットに保管しなければならない
これらの措置は、日本のFTXの顧客の資産の保全に役立ったが、一方で、厳しすぎる規制がイノベーションを阻害しているとの声もあがっている。
自民党のWeb3戦略
自民党のデジタル社会推進本部Web3プロジェクトチームは4月6日、「web3ホワイトペーパー 誰もがデジタル資産を活用する時代へ」を公開し、日本がこの分野をリードしていくことを宣言した。35ページに及ぶこの文書には「クリプトウィンターの先に最初に春を迎えるのは日本かもしれない。暗号資産分野で多くの苦難を乗り越えてきた国として、我々はweb3の計り知れない可能性について世界を説得する立場にある」と書かれている。
ここには、税制改革や会計基準の改善、ブロックチェーンベースの金融の規制などに関する提言が盛り込まれている。さらに、5月19日から広島で開催されるG7サミットで、政府がデジタル資産に関する議論を促進することを求めている。