顧客のスマートフォンにお得なセール情報などを送る位置情報型買い物アプリ「ショップキック」。「キック」を集めて景品と交換できるゲーム感覚がウケて、いま急速にアメリカで注目を集めている。
(中略)位置情報型買い物アプリ「ショップキック」を使えば、雑踏のなかでもお目当てのものが見つかり、しかも「ご褒美」までもらうことができる。
まず店内に入ると、アプリを立ち上げるよう案内するメッセージがスマートフォンに送られてくる。すると、メイシーズの人気商品が表示されて、「キック」という名のポイントが50~200点もらえるのだ。店舗によっては、スポンサーのついている商品に関する情報をスキャンするだけでもう500キックがもらえ、クレジットカードで75ドル(約7,500円)以上購入すると、さらに1,000キック入る。このキックはメイシーズで景品と交換したり、スターバックスカード(1,250キック)やiPad(125,000キック)と交換したりすることもできる。
(中略)ショップキックの共同創業者兼CEOで、ドイツ出身のシリアック・ローディング(41)が、高周波シグナルの超音波を利用して店内にいる顧客に「キック」を与えるアプリを立ち上げたのは2009年のことだ。彼は「だいぶ自問自答した」と話す。
「『モバイルの世界と物理的な世界の交差点はどこなのか?』と考えていたのです。答えは簡単でした。ショッピングです」
現在、ショップキックのユーザー数は7,500万人にも上る。そのユーザーが、人気ファッションブランド「アメリカンイーグル」やスポーツ用品大手「スポーツオーソリティ」といった150のブランドや15の提携小売店でアプリを使用するたびに手数料が発生する。毎年倍増しているという売り上げは、昨年2,630万ドルに上り、収益の45%を上げたとみられる。ローディングによれば、12年からは黒字に転じている。同社はこれまでに行った2度の資金調達で、じつに2,000万ドルを得ている。10年には、同社の評価額は7,500万ドルにまで上がっている。
(中略)店舗を訪れた顧客が商品を買う可能性の高まるしくみに、メイシーズは大喜びだった。
「閲覧者がサイトから商品を購入する『コンバージョン率』が非常に高いのです。コンバージョン率が非常に低いオンラインショッピングとは対照的な結果でした」とローディングは説明する。ネットのコンバージョン率は、通常3%程度だ。ショップキックはなんと20~95%の間だという。
(中略)一歩先んじている立場を守り続けるために、ローディングは常に買い物における人類学を学び続ける姿勢を崩さない。彼はいま、将来的に買い物は、必要なものを買うために行列するのではなくて、ギャラリーをぶらぶら歩くような感じになると考えているそうだ。(以下略、)