およそ9600万年間にわたり浅い海を支配していたエディアカラ生物群には、他の生物と類似性をもたない奇妙な生物が多く含まれている。それらは大型多細胞生物に向けた進化実験の産物であり、最終的には生き延びることができず絶滅したと考えられている。
「現代に子孫をもたないこれらの生物に関して、どうやって繁殖し、何を食べていたのかなどの生態に関する基本的疑問の解明に、私たちは今も取り組んでいる」。カリフォルニア大学で古生物学を研究する大学院生フィリップ・C・ボアンはこう語った。彼は、こうした謎の生物の少なくとも一部が、ある種のコロニーを作って共同生活していたことを示した最新論文の主著者だ。
この発見は、オーストラリアで最近オープンしたニルペナ・エディアカラ国立公園で発掘された化石の研究に基づいている。エディアカラ生物群は、一連の嵐によって短時間で海底に埋まったため、そこで共同生活していた動物全体の状態が砂岩の中に保存された。「こうして私たちは、生態系の全貌を明らかにすることができた」と論文の共著者で著名な古生物学者であるメアリー・L・ドローザー教授は語る。
研究チームはエディアカラ生物群のうち、比較的ありふれた3種であるトリブラキディウム(Tribrachidium)、ルゴコニテス(Rugoconites)、オバムス(Obamus)の空間分布を調べた。3種はいずれも、移動手段(足やひれなど)や感覚器官、さらには口器さえも持たないため、動くことができず、形状は放射対称だ。生涯を通じて堆積物の中に埋もれて生活し、古代の海底を覆っていた微生物から、体表面を通じて養分を吸収していた。
トリブラキディウムの分布はランダムで規則的パターンを示さなかった。ルゴコニテスは同じ種類を含む他生物と共に生活していたものもあったが、すべてがそうではなかった。しかし、オバムスの化石は、2個体以上からなる集団で見つるという明確な傾向が示された。
オバムスは2020年、ドローザー教授の研究室が、バラク・オバマ元米大統領とその科学への情熱に敬意を表して命名した(化石がオバマの耳に似ているからだという説もある)。この生物は硬貨よりも小さく、「フレンチクルーラーに似た形で、上にリボンがついている」(ボアン)という。
ニルペナのエディアカラ国立公園で発掘されたオバムスの化石(MARY DROSER/UC RIVERSIDE)
研究チームはオバムスが集団になる理由について、餌を食べるため、あるいは繁殖のためであった可能性が高いとみている。オバムスは幼生の形態で広がり、幼生は厚い微生物マットのある交配相手が近くにいる場所を好んでいた。
現代の生物の一部、たとえばフジツボも、同じような形で広まる。活動的に泳ぐ幼生期を終えると、成体は殻を直接基部から生やし、羽毛のような器官を使って水中から養分をろ過する。遺伝物質は長く柔軟な陰茎を通じて交換される。
「これは、生息地選択的エディアカラ生物で初めてかつ、肉眼で見える動物でも初めての例だ」とボアンは語る。「しかし、オバムスがどうやって行きたい場所へ行ったのかは、まだ分かっていない」
論文は学術誌Paleobiologyに掲載されている。
(forbes.com 原文)