妊娠中の野菜摂取が乳児のアトピーを予防する可能性 千葉大とカゴメ

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日本で50万人以上の患者がいるアトピー性皮膚炎。乳児期のアトピー性皮膚炎は、皮膚についた異物に対してアレルギーをおこす「経皮感作」のリスクになり、アレルギー性疾患の発症と関連している。そのため乳児期のアトピー性皮膚炎の発症メカニズムを明らかにすることは、将来のアレルギー疾患の発症予防に重要だと考えられている。

千葉大学大学院とカゴメによる研究グループは3月30日、野菜や果物が生合成する天然色素カロテノイド濃度の低さが、1歳時のアトピー性皮膚炎の発症と関連することを明らかにした。この結果は、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症に、母や子の野菜・果物の摂取量が関連している可能性を示している。

カロテノイドにはルテインやリコピンなどの種類があり、高い抗酸化力がある。β-カロテンやリコピンなど一部のカロテノイドは健康に有益な効果をもたらす。カロテノイドは野菜や果物などから摂取する必要があり、アトピー性皮膚炎を持つ子は健康な子に比べ、血清中のカロテノイド濃度が著しく低いことが知られている。

同研究チームは、アレルギーの家族歴を持つアレルギーハイリスクの新生児267名とその母親を対象にした出生コホート研究(※1)を実施し、妊婦(36週)と子(臍帯血・1歳)の血液と母乳中の個々のカロテノイドなどの濃度を測定した。さらにカロテノイド以外の因子の影響を考慮するため、性別や出生体重などの背景因子、皮膚黄色ブドウ球菌保菌などの環境因子を含めて、多変量解析(※2)を実施。その結果、生後6か月までに湿疹があること、母体血ルテイン濃度の低さ、1歳時の血中リコピン濃度の低さが、1歳時のアトピー性皮膚炎発症と関連していることが明らかになった。

また、妊娠中の母の血中カロテノイド濃度と、出生時の子の血(臍帯血)中カロテノイド濃度には明らかな相関があり、妊娠中の母の野菜・果物からのカロテノイド摂取が、子に影響していることが示唆された。

同研究により、妊娠中のカロテノイド摂取量が少ない母親の子は、乳児期アトピー性皮膚炎の発症リスクが高く、アレルギー予防のための早期介入の理想的なターゲットだとわかった。研究チームでは今後、妊娠中/授乳中の母や離乳後の乳児に、野菜・果物からのカロテノイドを補給することが、乳児期のアトピー性皮膚炎発症を抑制できるかどうかを検討するために、介入試験を含めたさらなる研究が必要だと考えているという。

※1 出生コホート研究:胎生期と出生後の環境がどのように児の発達に影響を与えているかを明らかにする観察研究である。したがって、妊産婦の食 生活、健康状態や疾病についても調査が行われている。
※2多変量解析:複数の種類のデータの間の相互の関連を分析する統計解析。

参考)東京大学 日本の出生コホート研究から得られた最新の知見
https://www.ped.med.tohoku.ac.jp/newborn/images/lineup/seminar/seminar17_201011.pdf

プレスリリース

文 = 大柏真佑実

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