5月10日にシードラウンドで600万米ドル(約8億円)の調達を発表したスクウェアXは、現在一般的なアンチウイルスソフトやファイアウォールとは異なるアプローチのサイバーセキュリティー製品を手がける。「オンラインであることを消費者が恐れないようにする、これがわたしたちのモットーです」とラマチャンドランは説明する。「ダウンロードしたいドキュメントや訪れたいウェブサイトをブロックすることは一切ありません。マルウェアが含まれているような場合であってもです」。
クラウド上で遠隔操作
それなのに、どうして消費者はオンラインで安全でいられるのか。それは、スクウェアXの言う「使い捨てブラウザー」のおかげだ。同社は既存のブラウザーに追加する拡張機能(アドオン)を開発していて、これをブラウザーにインストールすると使い捨てモードを選べるようになる。このモードでは、自分のデバイスと十分離れたクラウド上の安全なスペースで、サイトを訪れたり添付ファイルを開いたりできる。こうした方式は情報セキュリティー専門家のあいだで「リモート(遠隔)ブラウザー」とも呼ばれる。従来のサイバーセキュリティー製品では疑わしいドキュメントやサイトへのアクセスをブロックするのに対して、リモートブラウザーでは何でも開くことができ、作業すらできる。それらは「遠隔」に置かれたままなので、もしマルウェアなど危険だらけのものであっても、自分のデバイスとは絶対に接触しないからだ。
スクウェアXは、リモートブラウザ方式のメリットは人々が安全についていちいち気にかけることなく、普段どおりの活動を続けられる点にあると考えている。リモートワークがかつてないほど広がるなか、オンラインで必要なものがあるのに、ウイルス対策ソフトなどによってアクセスが妨害されることを、わずらわしく感じる人も増えている。「安全確保のために生産性が妨げられるということはあってはなりません。安全策は出しゃばってはいけないのです」とラマチャンドランは強調する。