日本全国の海で今、「磯焼け」が問題になっている。磯焼けとは、海藻が著しく減少・消失し、海藻が繁茂しなくなる現象。農林水産省の調査によれば、8割の都道府県で磯焼けによる藻場の衰退が確認されている。ただ、陸地で森林が禿げ上がっていればすぐに気づくが、海の中が砂漠化していても見えないので、なかなか認知しにくい問題だ。
このように深刻だが、実はあまり知られていない海の環境改善に取り組んでいるのが、葉山アマモ協議会である。葉山町の漁師や研究者、ダイバーなどを中心に、磯焼けしてしまった海に、再び海藻・藻場を甦らせる活動を行なっている。
同協議会では、その活動を人々に知ってもらうきっかけ作りとして、ひじきのワークショップを開催している。ひじきと聞くと少々地味な印象も受けるが、ゴールデンウィークに開催された「葉山ひじきデー2023」には、ファミリーを中心に約70人もの参加者が集い、開会式には葉山町の町長もかけつけるなど、活況をみせた。
「海藻がなくなると、海の生き物の棲家や食べ物がなくなり、魚介類が減ります。魚介類が減れば漁師も、消費者も困りますし、地域全体に悪影響を及ぼします。磯焼けは海藻だけではなく、生態系全体に関わる問題なんです」。そう話すのは、葉山アマモ協議会の海藻研究者 山木克則氏だ。
つまり日本の海藻が減っているということは、日本独自の豊かな食文化はもとより、社会自体の衰退にも繋がるので、誰にとっても対岸の火事ではないということ。さらに山木氏は、海藻の驚くべき能力について教示してくれた。
「海藻って、地球温暖化の防止にもなるんですよ。藻場は森林と同じで、二酸化炭素を吸収して固定化してくれます。その働きは、陸上の植物の場合はグリーンカーボン、海中の場合はブルーカーボンと呼び、どちらも地球温暖化の防止に欠かせないものです。そこでいま、この海藻を殖やす活動に力を入れているんです」
実は磯焼けにより海藻が減っているのは、地球温暖化が主な原因とされている。海水の温度が上昇することにより、海藻が成長できずに枯死したり、冬でも海藻を餌とするウニや藻食性の魚類などの摂餌活動が活発化するため、食害によって藻場が衰退しているのだ。つまり藻場に海藻を生い茂らせることで、生態系や社会も守られかつ、CO2の排出量を抑えられるので、一石二鳥というわけだ。