働き方

2023.05.12

藝大学長、日比野克彦から働く人へ──自分に会社を合わせる努力を

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自分に会社を合わせていく努力

「職業、寺山修司」という話がありましたが、本来、仕事とは、みんながそれぞれの名前で語られるべきものだと日比野さんは語っていました。職業は人の数だけあるということです。
 
「だから会社に入るときに覚えておかねばならないことは、あなたの職業はあなたなのだということ。つまり、会社に自分を合わせるのではなく、自分に会社を合わせていく努力が求められるんです」
 
自分で会社を変えてやろう。新しい組織をつくってやろう。新しい仕事に挑んでやろう。こういう意識をしっかり持っていれば、きっといい仕事ができるというのです。
 
「仕事って、自分を表現することだと思っているんです。アーティストや芸術家は、絵や音楽、文章、身体表現などで、直接的に自分を表現しますが、会社に勤める人だって同じだと思います」
 
直接的ではないにせよ、会社は社会に対して何らかのメッセージを発しています。その会社を動かしているのは、個々人です。それで経済は成り立っているのであり、人々の思いや意志が、必ずそこにはあるはずだということです。
 
「例えば、国際的な仕事って別世界にあるものではないんです。外資系の会社に入らなければできないわけではないし、外国に駐在しなければならないわけでもない。日本の場合は、まずそういうイメージを取り払うことが必要なのかもしれません」
 
何より重要なことは、何を表現したいのか。つまり、自分がどうしたいのかということなのです。
 
「表現したいものがあるのなら、国内とか海外とか、そんなことは関係なしにぶつかっていけばいいと思います。思いさえあればどこに行ってもできるし、言葉だってどうにでもなるものです」
 
さて、みなさんは、自分はこうしたいという思いはありますか。どんなことを仕事を通じて表現したいですか。社会に向けての意志とは、どんなものでしょうか。まずはそこに立ち戻って考えてみる。芸術の世界に生きてきた日比野さんからのアドバイスです。

文=上阪徹

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