このスモール・ジャイアンツ アワード第1回のファイナリストであり、審査員を務めた山田岳人(大都 代表取締役)が、会社を成長させるために必要な視点について語った。
ファイナリストの皆さんのピッチを聴いていると、年々グローバルへの視点が強くなっているのを感じます。会社が小規模だからこそ、世界に出ていかないとダメだという意識がとても強い。グランプリの筑水キャニコムも、売り上げの半分以上が海外で、いまは会社の規模に関係なく世界にチャレンジできる時代だと実感します。
私が経営する大都は、スモール・ジャイアンツ アワード1回目のファイナリストですが、2002年にEC事業を立ち上げ、すべての実店舗を閉めてECへ特化しました。その結果、取り扱いメーカーは約6000社へと成長し、21年にはベトナムに100%の子会社を設立。いまはそこで働く16人の社員全員がエンジニアであり、ECサイトの開発拠点になっています。
そんなふうに成長してきた自分の経験をふまえてみなさんに伝えたいのは、会社を大きく成長させたいなら「いま両手にもっているものを離せ」ということです。
ボルダリングで高く登っていこうとすれば、いま持っているホールドを手離さなければいけないのと同じ。そもそも中小企業は使える資金も人材も限られているので、「あれも、これも」ではなく、「あれか、これか」にしていかなければなりません。何かを捨てたり、手離したりする「選択と集中」が非常に大事になってくると思います。
もうひとつ、中小企業がブレイクスルーするうえで重要なのが、取引先なども含めて信じられる、そして信じてくれる仲間をつくること。どういう未来をつくりたいかを仲間に言葉を尽くして説明し、理解してもらうことも重要です。
いま若い世代の中小企業の後継者たちの間で地殻変動が起きています。みんなが必死で模索しているのは、家業の資産を生かした後継ぎならではの新規事業。スタートアップがもてはやされがちですが、日本の会社の98%は中小企業。どうやったらそこにイノベーションが起こせるかを考えていくことこそが、明るい未来につながっていくと思っています。
やまだ・たかひと◎大都 代表取締役。1969年、石川県生まれ。リクルート勤務を経て98年義父が経営する大都に入社。2002年にEC事業を立ち上げ、11年から現職。