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2023.05.25 16:00

日本人の価値観を変え“人生を取り戻す時間”を提供したい若き起業家が世界規模の会員制別荘事業に挑む理由

最大床面積850㎡規模という国内最大級の会員制別荘・ADDが今夏より本格始動する。事業を展開するBlue Orderの代表・武田崇嗣が追求する「人の介在しないおもてなし」とは。


不動産開発事業を行ってきたBlue Orderの代表取締役社長 武田崇嗣は、2020年の夏、妻と共に沖縄・小浜島の貸別荘で1週間を過ごした経験を「人生を取り戻せた時間」と振り返る。当時の武田は、星野リゾートを退社後不動産業に転身し、デベロッパーとして年間に100棟を売買する驚異的な営業をこなす多忙な日々を送っていた。

「そのころ、妻も自身で会社を経営していて、お互いに寝ても覚めても仕事のことばかり。自分のこと、大切なパートナーのことを考える時間などほとんどない状態でした」

「そのため、サービスとして人が介在するホテルではなく、自分たちのためだけの時間を過ごそうと、小浜島の貸別荘に向かったのです。初めて行った小さな島を自転車で巡り、地のものを食べ、土産物店の店主と話をする。何げない時間が、童心に返らせてくれました」

東京に戻った武田はその解放感を忘れられず、すぐさま別荘の購入を検討したという。

しかし、それが現実的でないことを悟るまでに時間はかからなかった。高額を投じて別荘を所有しても、税金などの維持費と実際に利用する日数を考えれば経済的ではない。そもそも1カ所に通い続ければいずれは飽きてしまうだろう。武田が、会員制別荘ブランドADDの着想を得たのはこの時だった。

「既存の会員制ホテルやシェア別荘のサービスも検討したものの、休息と刺激を両立する、日常から切り離された時間を提供できているところは多くはありませんでした。ならば、自分たちでサービスをつくり上げようと決意したのです」

武田の行動は早かった。これまでの不動産開発のノウハウを最大限に生かして、南房総の海沿いと琵琶湖の湖畔に理想とする土地を見つけるや、7,500万円を増資。起業から3年間の内部留保等約2億円を別荘の開発費に投じた。

Blue Orderの代表取締役社長 武田崇嗣

Blue Orderの代表取締役社長 武田崇嗣

自由度高く、快適を追求したウェルネスセカンドハウス

そもそもADDという名前には「生きてきた日常に追加するもの」という意味が込められている。その基本的なしくみは、国内外30拠点の別荘を上限2,000口の審査された会員でシェアするというものだ。

「2026年までに国内外に30拠点、1拠点あたり3棟までというコンセプトで建設を進めています。また、ADDの1口当たりの年間利用可能日は十数日と、既存サービスよりも少ない印象ですが、これはシェア型別荘の平均利用日数が年間10日程度という統計データを基に算出した結果です」

「1口あたりの価格を落とすことで、利用日数に合わせて購入していただけるよう自由度を高めています。このコンセプトに共感いただけたのか、21年6月に実施した第1期販売は、300万円台30口がわずか30分で完売しました」

ADDは30拠点を達成すると、31拠点目を建設するのではなく、既存の拠点を売却するなどして、新たなロケーションに転生していくコンセプトも併せもっている。また、利用できる拠点数に応じて口数をコントロールしているため、現状では120口ほどしか販売されていないという。

また、「不快な要素を限りなく取り除くことを重視する空間づくりを徹底した」というウェルネスセカンドハウスがADDの特徴のひとつだ。

「例えば、自宅より狭くて、水がおいしくない別荘には行きたくないですよね。そのためADDでは、リビングやバーなどの共用部には瞑想状態をつくり出すBGMを流し、居室などプライベート空間を含む全館で浄水と電磁波カットを実施。肌に触れるパジャマやリネンはOCS認証等のコットンを使うなど工夫しています」

日本の生活様式に世界規模の変化を

さらに、ADDのロケーションと規模についても武田のこだわりは強い。ADDの拠点は、国定公園や国立公園、重要文化的景観など非常に希少性の高いロケーションに位置している。だが、土地の希少性が高まるほど、開発のハードルも高くなることは容易に想像できる。

「圧倒的なロケーションと国や地域文化を保護するための制約が多い土地に別荘を建てることができる弊社の強みは、開発の柔軟性とADDの事業モデルにあると思います。建物の意匠、道路からの距離などさまざまな制約があるため、ホテルを建設しようとしてもブランドコンセプトに合致せず諦めなければならない場合が多いのです」

「しかし、弊社には、土地の特性を生かして、ゼロベースから最高の別荘を建築するノウハウがあります。また、ADDの審査された特定の会員しか利用しないという事業モデルは、オーバーツーリズムとは無縁であり、地元のステークホルダーに受け入れられやすいのです」

事実、このようなADDの特性と武田の土地への惚れ込みがあったからこそ、南房総で約1,000坪、琵琶湖で約4,000坪、屋久島で6,000坪、沖縄で500坪という広大な敷地を取得することができた。

加えて、ADDは武田の原体験から、その土地と暮らす人々との結びつきを重視している。クリーンサービスを地元企業と連携することはもちろん、地元アーティストの作品を別荘に配置したり、休耕地を活用した家庭菜園(南房総)を設けたり、徒歩数分のシークレットな巨大な高齢杉を案内(屋久島)したりと、ロケーションを生かした刺激の提供も忘れていない。




上から、星命の別邸(屋久島)、海と月の別邸(南房総)、湖畔の別邸(琵琶湖)、翠玉の別荘(沖縄)のイメージ

上から、星命の別邸(屋久島)、海と月の別邸(南房総)、湖畔の別邸(琵琶湖)、翠玉の別邸(沖縄)のイメージ

そもそも、数千坪におよぶ広大かつ希少性の高い土地に立つ250坪クラスの高級別荘をシェアリングするサービスは、日本に類がない。しかし、武田の求めるものはADDが描き出す現在のかたちではない。

「ADDのロケーションと規模は、国内に並ぶものがほとんどないと自信をもっています。しかし、海外のセレブが過ごす別荘と比較すれば、見劣りします。私が目指すものは、海外の別荘、具体的には建築費20億〜30億円規模の高級別荘を、ライフステージにあわせて利用日数分だけ購入し、不要になれば損なく売却できるようにすることです。身軽なライフスタイルとして、提供したいのです」

「数年前、私がこのコンセプトを話すと、多くの人は呆れていました。そんなことは無理だと。果たして、そうでしょうか。コロナ禍でワーケーションが一般化したように日本人の生活様式が変わり、所有からシェアへと価値認識が変わっています。私はADDを日本に根付かせることで、大人の創造性を活性化し、孫に誇れる日本を紡いでいきたいと考えています」

社名であるBlue Orderの意味は、“海の秩序”。世界をつなぐ海を伝って、日本のみならず世界に飛躍するという武田の信念が込められている。23年7月、南房総と琵琶湖の別荘がオープンし、武田は会員制別荘ブランドADDという船で世界に向けて出帆する。

Blue Order/ADD
https://add-second-house.com

たけだ・たかつぐ ◎Blue Order代表取締役社長。大学卒業後、星野リゾートに入社。入社2年目にしてホテルの運営責任者を経験する。不動産ベンチャー企業に転職後、 2018年、合同会社Blue Order創業。これまでの実績と独自の経営感覚を武器に、ひとりデベロッパーというまれな企業体制で、個人の売買実績は年間100棟と、国内トップクラスの取引実績を誇る。20年、企業買収、自社ビルの建設を開始。現在はBlue Orderグループとして組織拡大・再編し、現職。

Promoted by Blue Order / text by Kenji Yoshinaga / photograph by Takayuki Abe / edit by Miki Chigira