2. 顧客との関係を完全にコントロールする
小売企業は、長期的に顧客との関係を構築するために、今後、独自のエンドツーエンド機能を導入することに注力すると思われます。そうすることで、商品の発見から配送、返品に至る消費者体験全般にわたってのメッセージングやブランドイメージをコントロールできるようになり、また、自社のウェブサイトやモバイルアプリを通じてシームレスなショッピング体験を提供することができます。
・米国を拠点とする食料品小売企業のThe Save Mart Companies(TSMC)は、2021年12月にSwiftlyと提携し、既存のモバイルアプリケーションを改善しました。同社のCMOによると、改良によってユーザーフレンドリーとなった同アプリは、ショッピング体験をさらに便利になるように設計され、ロイヤリティとEコマースを統合した体験を提供します。
サードパーティの配送業者との提携は、競合他社に注文を奪われないというメリットがある一方で、顧客との関係をエンドツーエンドでコントロールするコストがかかるというデメリットがあります。
例えば、配送業者との提携では、小売企業がコントロールできない、遅延などのネガティブな要素があれば、顧客との関係に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、注文処理ごとに高額な手数料も発生します(取引額の8~12%)。
そのため、小売企業各社はこうしたことを認識し、完全にコントロールできるようにするための対策を講じています。例えば、Walmartは、配送プラットフォームSpark DriverとInHomeデリバリーサービスを通じて、ラストワンマイルを自社で行うことに注力しています。
Coresight Researchでは、このようにラストワンマイルを含むエンドツーエンドの関係をコントロールすることは、規模が小さい小売企業にとっても同様に重要であると考えます。
3. ファーストパーティ顧客データの収集と管理
小売企業にとって顧客との関係をコントロールするために重要な要素の一つは、ファーストパーティ顧客データの収集と管理です。消費者のプライバシーに関する法律が強化され、サードパーティクッキーが段階的に廃止されているため、ファーストパーティ顧客データを所有することの重要性は高まっています。例えば、Googleは2024年にウェブブラウザであるChromeのサードパーティクッキーを段階的に廃止する予定を発表しています。
ファーストパーティデータは、収集、管理、および効果的な活用ができれば、小売企業にとって顧客ロイヤリティを高めるための最も貴重なリソースとなりえます。というのも、消費者から直接収集したデータは信頼性が高く、正確でユニークな顧客分析を行うことができるため、よりシームレスでパーソナライズされたショッピング体験を提供することができるからです。
そのため、小売企業は、顧客データに基づいてマーケティングを含む購入過程をカスタマイズすることで、コンバージョンを向上させ、繰り返し購入する可能性を高めることができます。
・2022年9月に行われたCNBCのインタビューで、Krogerの取締副社長兼CIOであるYael Cosset氏は、同社はデータを活用してアプリやウェブサイトなどのデジタルチャネルで顧客と関わり、適切な顧客対応とパーソナライズされたショッピング体験を提供していると述べています。