「エレクトリック・ビル」の愛称で知られるリーダーコーチングの専門家ビル・ウィリアムズは、リーダーは時間配分を検討し、毎日しっかり「充電」することを心がけ、1日の始めよりもエネルギーが多い状態で1日を終えるようにすべきだと説く。
ウィリアムズによれば、充電というのはたんに休息することではない。それどころか、パッション(情熱)に駆り立てられた活動や、目に見えるインパクトを生む活動も含まれる。こうした意味での充電はリーダー自身のエネルギーも回復してくれるし、組織全体の成功にも寄与する。彼がいみじくも述べているとおり「あなたが自分のつくったものを気にかけていなければ、誰もそれを買おうとはしない」のだ。
ウィリアムズは著書「Electric Life: 12 Microsteps to Pay Attention, Be Brilliant, and Go Deep」(未邦訳)で、リーダーが充電のために最初にすべきこととして「内省」の大切さを力説している。人それぞれに個性があるのだから、エネルギーを増進する方法も1つではないと彼は考える。そこでまず、リーダーがおのおの自分のことを深くかえりみて、いま自分が何を求めているのか、何をやらないといけないのかを明確にする必要があるというわけだ。
とはいっても、内省するのはなかなか難しいという人もいるだろう。そんな人のためにウィリアムズが提唱するのが「ポージティビティ(pausitivity)」という考え方だ。「間を置く、立ち止まる、小休止する」といった意味の「pause」と「積極性」や「プラス志向」を意味する「positivity」をかけ合わせた造語で、いつもポジティブであろうとした結果、かえって自分に「毒」になる「トクシック・ポジティビティ」を中和する魅力的なコンセプトだ。
「ポージティブ」なリーダーは、自分の置かれている状況をいろいろな視点からじっくり考える余裕をもてる。そうして、決まりきった反応をして偽りの安心感を得るようなこともなくなる。ウィリアムズがポージティビティの重要性に目覚めたのは、父親の最期をみとる経験からだった。その際に、いちど立ち止まって、自分の悲しみと向き合い、父親の立場に寄り添うこの大切さに気づいたという。