コイヌールダイヤモンドを巡る論争
インドのナレンドラ・モディ首相が所属するインド人民党は、コイヌールダイヤモンドが「植民地時代の辛い記憶を呼び覚ます」と表明。インド政府だけでなく、イランやアフガニスタン、パキスタンも、数世紀にわたる歴史の中で指導者がコイヌールダイヤモンドを所有していたこともあり、自国に返還されるべきだと考えている。イスラム主義組織タリバンも、コイヌールをアフガニスタンに返還するよう英国に要求している。今回、カミラ王妃の冠にコイヌールダイヤモンドではなくカリナンが使用されたことは、君主制に反対する人たちの嘲笑の的となった。しかし、カリナンダイヤモンドに対しても、南アフリカへ返還するよう求める声が上がっている。南アフリカの弁護士で活動家のモスシ・カマンガはロイター通信に「ダイヤモンドは南アフリカに戻らなければならない。私たちの誇り、遺産、文化の証となる必要があるからだ」と語っていた。
象牙取引の批判者として最も注目されているのはウィリアム皇太子だ。同皇太子は象牙を「贅沢の象徴ではなく、破壊の象徴」と見なし、動物を殺処分から守るために全面的に禁止するよう訴えている。ウィリアム皇太子が象牙の取引を激しく批判していたことから、戴冠式に先立ち、カミラ王妃が象牙の笏を使うかどうかを巡って英国メディアではさまざまな憶測が飛び交っていた。
長い植民地主義の歴史を巡り、英国は改めて批判にさらされている。英国は歴史上、世界の9割の国々を侵略し、56カ国が現在も英連邦に属している。オーストラリアやカリブ海諸国を含む英連邦では、2021年に独立を宣言したバルバドスに続き、エリザベス女王の死後、連邦からの独立に関心を示す国もある。
英国内でも王室への好感度は急落している。英国立社会調査センターが先月発表した調査結果によると、王室を「非常に重要」と答えた回答者はわずか29%にとどまり、40年前に調査を開始して以来、最低となった。
英王立勅許鑑定士協会(RICS)は2019年、英王室が所有する宝飾品の価値を40億ドル(約5400億円)と見積もった。これは、1887年のフランス王室の宝飾品の売却と2006年の故マーガレット王女の宝飾品の売却を比較対象として算出したもの。100点以上の品と2万3000個の宝石から成る英王室の宝飾品は、1660年代からロンドン塔で保管されている。
(forbes.com 原文)