その物体は太陽の2000万倍の質量を持ち、3つの銀河が合体した後、ブラックホールが定期的に存在する銀河の中心から宇宙へ飛び出したと考えられている。
その移動は非常に速く、もし太陽系の中にあれば、地球から月まで14分で移動できる。
The Astrophysical Journal Lettersに掲載された研究によると、そのブラックホールが通った後には、新しく生まれた星からなる長さ20万光年におよぶ痕跡があることが明らかになった。それは過去に見られたことのないものだった。
発見は偶然だった。「ハッブルの画像に目を通していたとき、小さな一筋に気づきました」とコネチカット州ニューヘイブンにあるエール大学のピーター・ヴァン・ドックムはNASAが「目に見えない怪物」と呼んでいる物体について説明した。
「それはこれまで見たことのある何ものにも似ていませんでした」
ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブ画像には、見慣れない線状の痕跡が写っていた(NASA, ESA, PIETER VAN DOKKUM (YALE); IMAGE PROCESSING: JOSEPH DEPASQUALE (STSCI))
「私たちが見ているのは、ガスが冷却されて星々を形成することのできるブラックホールが残した痕跡だと考えています」とヴァン・ドックムはいう。「見えているのは、船が通った後にできるものと同じような、ブラックホールの後にできた『航跡』です」
新しく生まれた星々の帯の幅は、天の川銀河の2倍。放浪するブラックホールが目の前のガスとちりをかき混ぜ加熱して、航跡の中に星が形成される理想的状態を作りだした結果のものだ。ブラックホール自体がガスとちりを消費しない唯一の理由は、その移動速度が速すぎるためだ。
「ブラックホールの前方にあったガスは、ガスの中を通過するブラックホールの超音速、超高速衝突のために衝撃を受けます」とヴァン・ドックムは言った。「正確な仕組みはまだわかっていません」
追跡観察は、ハワイ州マウナケアにある世界最大の光学赤外線望遠鏡であるケック天文台で実施された。次は、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とチャンドラX線観測衛星を使用した観測で、ブラックホールの存在を確認する予定だ。
NASAが2027年に打ち上げを予定している広角のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が、宇宙のどこかにあるこれらの奇妙な形の物体をもっと見つけてくれることが期待される。
(forbes.com 原文)