働き方

2023.05.10 12:30

コロナ後の「五月病」に留意 組織のウェルビーイングとは

五月病の予防法

五月病のみならず、メンタルヘルス全般に役立つ対策もあります。

会話でストレス解消

同僚や仲間、家族、友人とコミュニケーションをとり、問題を共有することがストレス解消につながります。一人での食事は避け、リラックスできる時間を増やすこともストレス解消につながります。

栄養バランスの良い食事を心がける

主食、副菜、主菜の組み合わせを意識することも重要です。不規則な食事や偏った食事は、脳の栄養不足を招きやすく、特に感情をコントロールする神経伝達物質であるセロトニンが不足しがちです。セロトニンは、動物性たんぱく質に多く含まれるトリプトファンから合成されるといわれます。

良質な睡眠をとる

睡眠は、疲労回復に重要な役割を果たします。起床・就寝のリズムを整える、夕食は就寝の2時間前まで、入浴は就寝の1時間前までに済ませる。また就寝前にテレビを見ない、携帯電話やパソコンなどの機器を使用しないなど、質の良い睡眠をとるために有効な習慣も重要です。

メンタルヘルスの取り組み

メンタルヘルスの不調は、5月に限定して起きるものではありません。厚生労働省によると、仕事によるストレスを原因とする精神疾患の労災件数は2020年に2051件となり、2015年から35%増加しています。

一方、調査会社の富士経済によると、ストレスチェックやメンタルヘルス対策の国内市場は、2025年にはパンデミック前の2019年の約2倍となる288億円(2億1470万ドル)に拡大すると予想されています。

企業も対策に乗り出しています。商業施設を運営する丸井グループでは、2021年に医師の小島玲子医学博士が、チーフウェルビーイングオフィサーに着任しました。

小島氏が率いるプロジェクトのひとつに、レジリエンス・プログラムの確立があります。この取り組みは、ウェルビーイングについての理解を深め、身体的、感情的、精神的、霊的な健康を改善するために必要なことを、経営層にも理解してもらうことを目的としています。四半期ごとに開催されるセミナーやプレゼンテーションを通じて、上級管理職はウェルビーイングをマネジメントスキルの一部として考慮する方法を学びます。

楽天では、チーフウェルビーイングオフィサーの小林正忠氏のもと、ウェルネス部が、カフェテリアの食事提供やフィットネスジムの整備など、社員の心身の健康をサポートする施策を担当しています。

また同社エンプロイー・エンゲージメント部門は、楽天主義の共有やダイバーシティの促進などの施策の実施を通じて、従業員と組織との心理的つながりを強化する役割を担い、サステナビリティ部は、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連の情報発信を含むソーシャルウェルビーイングを担当。「個人のウェルビーイングなくして、組織のウェルビーイングなし。組織のウェルビーイングなくして社会のウェルビーイング なし」と小林氏は言います。

メンタルヘルスのコストは上昇

世界経済フォーラムとハーバード大学公衆衛生大学院が発表した研究によると、メンタルヘルス疾患(および関連する結果)のコストは、2010年の2.5兆ドル(約335兆円)から2030年には世界で6兆ドル(約805兆円)にまで増加すると予測されています。

世の中のスピードは加速し、予測不可能な出来事も起こります。こうした中、何がきっかけで気持ちが落ち込んでしまうかわかりません。すべての問題は個人で解決し「元気でいる」事が当然である、と片付けてしまっては、社会として解決にならないのです。

パンデミックや五月病の有無にかかわらず、社会全体の事としてメンタルヘルスを支える仕組みを構築することが、重要かつベネフィットとなるのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Naoko Tochibayashi, Public Engagement Lead, World Economic Forum, Japan

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