事業継承

2023.06.03 10:00

持続可能な経営、必要なのは家族と「コミュニティ」

PFVの活動はメンバー間だけに留まらず、広く社会に貢献することもミッションとしている。

その一環として、2020年に、賞金10万ユーロ(約1500万円)が贈られる「Family is Sustainability(家族は持続可能性の代弁者)」賞を創設した。この賞は、自分たちと同じく家族経営の会社が、分野を問わず、引き継いできた卓越した工芸や職人技を次世代にわたり継承し、その上で社会的責任や持続可能性を推進することを目的としている。

メンバーのマチュー・ペラン会長はこう言う。

「次世代にバトンを渡していくことは、ファミリービジネスの重要な側面です。私たちは、自分たちをオーナーとしてだけではなく、次世代への通過点と考えています。私たちの遺産を永続させ、将来を築いていくことに貢献したいのです」

この賞には、これまで日本からも多数応募があり、第1回では鹿児島の沈壽官窯、第2回では京都の堤淺吉漆店が最終候補の一つに選出された。堤淺吉漆店の4代目の堤卓也さんは、この賞に応募した理由を「きれいな地球とともに漆の文化を次世代に繋ぎたい。そのために漆のことを世界中の人に知って頂く機会にしたいからです」と語る。

堤淺吉漆店の4代目の堤卓也さん(写真=PFV及び堤淺吉漆店 / Ichi Nakamura&Shinichi Kotoku)

堤淺吉漆店の4代目の堤卓也さん(写真=PFV及び堤淺吉漆店 / Ichi Nakamura&Shinichi Kotoku)


現在、第3回の賞の応募を受け付けている。締め切りは2023年10月末。分野は問わず、2世代以上続く家族経営の企業が対象だ。伝統工芸が根付く日本にはPFVのメンバーも注目していて、日本からの応募も、引き続き期待されている。


PFVを構成する12のメンバー: マルケージ・アンティノリ(トスカーナ)、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド(ボル ドー)、ジョセフ・ドルーアン(ブルゴーニュ)、ドメーヌ・クラレンス・ディロン(ボルドー)、エゴン・ミュラー・シャル ツホーフ(モーゼル)、ファミーユ・ヒューゲル(アルザス)、ポル・ロジェ(シャンパーニュ)、ファミーユ・ペラン(ローヌ・ヴァレー)、シミントン・ファミリー・エステーツ(ポルトガル)、テヌータ・サン・グイド(トスカーナ)、ファミリア ・トーレス(スペイン)、ヴェガ・シシリア(リベラ・デル・ドゥエロ)

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文=島 悠里

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