最初は全て自分でやる
──佐上さんが考える、起業家にとって重要な素養を挙げるとすると何でしょうか?「徹底的にやりきる」。何事も全く妥協せずに、最後までやりきることです。
よく「経営者はさまざまなジャンルに対して90点くらい取れないといけない」と言われますよね。ある程度キャリアを経て経験や人脈が豊富な人なら別ですが、若くして起業して会社を大きくしようとすると「経営者自身の能力が圧倒的じゃないと誰もついてこない」と思っています。
なので私は「全て自分でやってみる、徹底的にやりきる」と決めました。
学生時代はデザイナーとして多数のサービス開発をし、新卒では若いうちでないと習得するのが難しそうなエンジニアリングを学ぼうと、当時一番システムとして先鋭的であったDSP配信プラットフォームを開発するマイクロアド社にエンジニアとして入社しました。
そこでマーケティングについても学びましたし、1度起業(2016年に1社目であるAlpacaを創業し、約1年でベクトルへ株式譲渡)した際にファイナンスや人事・広報も自分で徹底的にやりました。採用に関しても今までに1000人以上面接してきたと思います。
あらゆる領域に精通しているが故に、マネジメントする際にどの作業にどれくらい工数が発生するか、全ての業務に対して数字で把握できています。
最初は自分自身が徹底的にやって理解する。タスク化させてからは基本的には人に任せ、自分は別の業務を行う。これが私のスタイルです。
成功の法則は「逆算思考」
──学生時代から経営者を目指して、意図的にさまざまなスキルを習得したということでしょうか?原体験があればお聞かせください。父は警察官で、祖父は会社経営者でした。家が近かったので毎週祖父の家に行っては「商売とは何か」というのを教えこまれていた気がします。そこから経営者に興味を持ち始めました。
祖父がよく言っていたのは「運は全員一定。結局、常に努力し続けて、運が来たタイミングでそれをつかみ取れるかどうかが差になる」「当たりが100分の1のおみくじは、当たるまで100回挑戦すれば必ず成功する」といった根性論的なこと。
でも実際、私も学生時代を含めると数十の事業を当たるまでやり続けたおかげで「事業がうまくいく法則性」を体得しました。ですから、「まずは自ら何でもやってみる」というマインドはそこから生まれているように思います。
──「うまくいく法則性」について詳しくお聞かせください。
「逆算思考」が法則性かもしれません。
優秀な経営者、例えばソフトバンク孫正義社長などは、皆さん「60歳までにどうする」という逆算をされていますよね。逆算しないと、そもそも明確な目的を持って行動はできないと思います。
ですから、まずは目標を持つ、しかも数値的な目標を。そしてそれに合わせ、どういう障害があるか全て洗い出して論理的に行動を組み立てていく。数字に基づかない経営は上手くいき続けることが難しいです。
この逆算思考が「事業家と経営者の違い」なのだと思います。