2016年12月、ノースカロライナ州に住む若い男がライフル銃を持って、コメット・ピンポンに押し入った。男は発砲した後、警察に逮捕された。「幼児虐待をしている」と指摘された地下室はなかった。米国に住む知人は「男はSNSを使って実況中継をしながら、店を目指していた。陰謀論もここまで来たかと、恐ろしい気持ちになった」と語る。
店内には、経営者が熱心な民主党支持者なのか、ミシェル・オバマの大きな絵がかけられていた。ただ、それ以外は普通のピザレストランだった。メニューも、ピザが16〜19ドル程度と、一品20ドル以上がざらのワシントンのレストランの中で良心的な価格設定だ。古い木製のベンチシートの座り心地はそれほど良くないが、店内は8割ほどの客で賑わっていた。客層は9割が白人で、陰謀論の対象になるような雰囲気は全くない。
店員にピッツァ・ゲートについて尋ねると、嫌がらずに、「今でも、いたずら電話がかかってくるけど、もう事件の影響はほとんどないね」と答えてくれた。「事件の後、逆に店が有名になってお客さんが増えたんだけど、新型コロナウイルスで客足が止まったんだよ。しばらく苦しかったけど、ノーマスクになってようやく客が戻ってきたところ」だという。「日本の人には、コメット・ピンポンは非常にノーマルな店だと伝えておいてくれよ」と頼まれた。
こんなに普通の日常生活が、あっという間に崩れるから、陰謀論は恐ろしい。米国では共和党支持層の6割が依然、2020年大統領選でのバイデン氏の勝利には不正があったと信じている。国家が陰謀論を利用する時代、コメット・ピンポンのような事件が日本でも起こらない保証はない。
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