相次ぐ米地銀の破綻が仮想通貨の普及に拍車をかける

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年初からの市場価値の変化をみると、SVB、シグネチャー、クレディ・スイス、ファースト・リパブリックは計500億ドル(約6兆7420億円)を失った。一方、NYSEアーカ金鉱株インデックスを構成する金生産企業の時価総額は410億ドル(約5兆5280億円)以上増え、ビットコインの時価総額は年初に3180億ドル(約42兆8775億円)だったのが5月1日には5660億ドル(約76兆3170億円)になった。

脱ドル傾向への懸念

また、金とビットコインの好調ぶりを支えているのは米ドルの価値の着実な低下だ。ドルは4月28日に小幅上昇したが、週では0.16%下落した。

投資家やアナリストは脱ドル化の傾向に引き続き警鐘を鳴らしている。資産運用会社Eurizon SLJ(ユーリゾンSLJ)の最高経営責任者で米金融モルガン・スタンレーの元マネージングディレクターであるステファン・ジェンは、ドルが「驚くべき」ペースで準備通貨の地位を失いつつあると話す。ジェンによると、ドルは2016年以降、市場シェアの約11%を失い、2008年以降でみるとその倍を失っているという。

ドル崩壊の原因は米国の対ロシア制裁にあるとジェンは考えているようだ。「米国とその同盟国がロシアに対して取った尋常でない行動は、外貨準備高が多い国を驚かせた」とジェンは指摘した。

イーロン・マスクも同じ見方を示し「何度も通貨を兵器として使えば、他の国々は通貨を使わなくなる」とツイートした

一方、富豪の投資家スタンレー・ドラッケンミラーは、米ドルの売りが現在唯一の確信度の高い取引であるとし、自身の45年間の投資生活において世界市場でこれほどの不透明性は見たことがないと語った。1990年代初めに、当時、著名投資家のジョージ・ソロスと組んでいたドラッケンミラーが英ポンドを売り、10億ドル(約1350億円)以上の利益を得たのは有名な話だ。

ジェン、マスク、ドラッケンミラーの主張に共感するなら、金(とビットコイン)という選択は理にかなっているかもしれない。

この点に関して、266兆ドル(約3京5870兆円)もの投資可能な資産市場の中で金が占める割合がまだ比較的小さいことに筆者は驚いている。主要金鉱山会社による非営利団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、投資家が現在保有している金地金(延べ棒やコイン、金上場投資信託を含む)は世界で約3兆ドル(約405兆円)だという。これは株式や債券などすべての金融資産への投資額の約1%だ。

筆者は資産を分散することが重要だと考えており、そこには金への投資も含まれる。筆者はこれまで金と金鉱株への投資比率を10%にすることを勧めてきたが、ドルが不安定になる可能性がある今、その確信はさらに強まっている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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