クラウン・エステートが2022年度にあげた純利益は、約3億6100万ドルだった。これは全額、英財務省に納められる。そして王室は2年前の会計年度の純利益の25%を「王室助成金(ソブリン・グラント)」として財務相から受け取る。2022年度の助成金は2019~20年度のクラウン・エステートの純利益に基づいて算出され、約1億840万ドルだった。
だが、チャールズ国王が直接、この莫大な金額を受け取るわけではない。非課税の王室助成金は、10%がバッキンガム宮殿の維持費、15%が王室メンバーの公務での旅行にかかる費用や公式行事の費用、職員の給与などに充てられる。
そのほか国王は、ランカスター公領からも収入を得ている。君主のために信託されているこの公領の資産価値は、およそ8億2000万ドル。公領からの収入は国王が直接「手元金」として受け取り、上記以外の公的な支出に充てられている(2022年の金額は、税込みでおよそ3000万ドルだった)。
エリザベス女王は1993年以降、この手元金のうち公的な目的以外に使用される分については、ほかの国民と同じように所得税を支払うとして、自発的に納税していた。チャールズ国王も即位にあたり、女王のこの方針を維持することに同意している。
そのほか、クラウン・エステートは、スコットランドでおよそ7億6000万ドル相当の資産を管理している。これには周辺の領海の海底や、スコットランドでの天然サケ漁、金・銀の採掘に関する権利が含まれる。
「クラウン・ジュエルズ」の価値は?
英国王室が所有する財産として最もよく知られているのは「クラウン・ジュエルズ」だろう。ロイヤル・コレクションの一部をなすこれらの宝飾品も「君主が国民のために」信託しているものだ。レンブラントやフェルメール、カラヴァッジョ、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品などを含むロイヤル・コレクション全体の価値が、高額であることは間違いない。英国を拠点とするコンサルタント会社、ブランド・ファイナンスが2017年に公表したレポートによると、このコレクションの価値は、およそ127億ドルと推定される。