最初に浮かんだ実現可能な選択肢を選ぶ「サティスファイシング」の問題点

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ほとんどの意思決定は「サティスファイシング(Satisficing)」によって下されている。サティスファイシングとは「satisfy(満足する)」と「suffice(十分である)」が組み合わさった造語で、何かを決める際、最も理想的なアイデアやベストな案はどれなのか検討せずに、最初に浮かんだ実現可能な選択肢を選んでしまうことを指す。

サティスファイシングは、ときと場合によっては有効だ。つまり、時間がまったくないときに決断を下すときには有効なやり方になり得る。組織が意思決定を行うときに、サティスファイシング的なやり方をすることはかなり多い。選択肢を徹底分析するために必要な時間やリソースがあるときですら、サティスファイシングで決断を下しがちなのだ。

しかし、これには問題がある。最低条件を満たした1つ目の選択肢が、実際に最適であることはめったにないからだ。

「これでいいだろう」という選択肢で妥協してしまえば、もっと適切なアイデアがあるかもしれないのに、それを選ぶチャンスを逃してしまうことになる。ベストを目指すための努力を怠れば、成果のレベルが下がってしまうかもしれない。

サティスファイシング的なやり方で決断すると、後悔する可能性もある。1つの決断を下した後に、それを上回る選択肢の存在に気づき「もう少し時間をかけて選択肢を検討すればよかった」と自分に腹を立ててしまうこともあるだろう。それどころか、リーダーである自分にチームメンバーたちが寄せる信頼が揺らいでしまう場合もある。

サティスファイシングは、他のかたちでもチームのパフォーマンスに悪影響を与えることがある。業績向上やイノベーションに向けたモチベーションが下がりかねないのだ。「これでいい」という意思決定を当然のように行っていれば、もっと上を目指そうという意欲や、チャレンジ精神にあふれた社風は育たない。やがては「この程度で十分だ」と妥協する社風が生まれてしまう。最悪の場合は、自分自身に挑戦する意味をほとんど見いだせなくなった従業員たちが、何事もすぐに諦めるようになってしまうだろう。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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