経済・社会

2023.05.08 06:15

不正発覚による倒産が過去最多 サービス業、運輸・通信業が半数

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コロナ特例「ゼロ・ゼロ融資」の終了に物価高、人手不足と、依然続く企業の厳しい経営環境。経営が傾くと、増えてくるのがコンプライアンス違反だ。帝国データバンクによると、昨今、コンプライアンス違反を犯したことが明るみに出て、倒産に至るケースが増えているという。

帝国データバンクは2005年4月から23年3月までの18年間において、粉飾や業務違反、脱税などのコンプライアンス違反が判明した企業の倒産(以下、コンプライアンス違反倒産)を分析した。

同社によると、2022年度のコンプライアンス違反倒産は300件で、前年度から147.1%増加。2005年の調査開始以来、最多を記録した。これまでピークだった2015年(289件)以降、コンプラ違反倒産は、緩やかな減少傾向にあった。

帝国データバンクはそうした変化について、「特に2020年はコロナの各種支援策が企業に幅広く行き渡ったことで、コンプラ違反による企業の倒産が表面化しづらくなっていたと見られる。しかし、新型コロナが収束に向かい、全体の倒産件数が上向いてきているなかで、コンプラ違反が明らかになり、信用を失うケースが散見されるようになった」と解説した。

さらに、2022年のコンプライアンス違反倒産を業種別で見ると、最多が「サービス業」の88件で全体の約3割(29.3%)を占め、「建設業」(59件/19.7%)、「運輸・通信業」(54件/ 18%)の順に。

業種細分類別では、「サービス業」で「老人福祉業」が最多の35件となり、中でも機能訓練型デイサービスとフランチャイズ事業を展開していたステップぱーとなー(東京都台東区、22年8月破産)グループの連鎖倒産が30件を上回った。「運輸・通信業」では、「貨物運送」が7割近く(36件/66.7%)を占めた。

違反類型別では、「資金使途不正」が最も多く(69件/23%)、続いて「粉飾」(62件/20.7%)、業法違反(61件/20.3%)という結果に。

コロナ禍前に増加傾向にあった「粉飾」は、20年度以降、コロナ禍の手厚い資金繰り支援の効果もあり減少していたが、再び増加の兆しが見られた。借入金の返済が厳しくなり、金融機関に追加融資を申し込んだ際に不適切な会計処理が明らかになるケースが多かったという。また、コロナ禍で各種助成金などの「不正受給」による倒産が前年から倍増した。

「粉飾」を業種別に見ると、「卸売業」(33.9%)が最も多く、架空取引や融通手形を使用した事例が目立った。「業法違反」では「運輸・通信業」が6割を占め、長時間労働などで行政処分を受ける企業が多発した。

帝国データバンクは「今後も厳しい経営環境のなかで、企業存続のためコンプラ違反に手を染めていた、あるいは染めはじめるケースが表面化していくことが考えられる」と予測している。

プレスリリース

文=大柏 真佑実

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