訴えを起こしたのは米NPOの生物多様性センターや米国鳥類保護協会などのグループ。FAAが打ち上げによる環境やコミュニティーへの影響について包括的なレビューを実施せず、スペースX側に環境問題の緩和も義務づけないまま、昨年6月に打ち上げ計画を認め「重大な影響はない」とも結論づけていたのは、国家環境政策法に違反すると主張している。スペースXは今年4月、スターシップ打ち上げに必要なライセンスを付与された。
月や火星に人間を送り込むことをめざして開発されたスターシップは4月20日、テキサス州南部ボカチカにあるスペースXの宇宙基地「スターベース」から打ち上げられ、数分後に空中で爆発した(スペースXは「予定外の急速な分解」と表現している)。米魚類野生生物局によると、爆発によって鉄筋コンクリートや金属などの破片が広範囲に撒き散らされたほか、火災も発生して1万4000メートルほどのエリアが焼けたという。
原告は首都ワシントンの連邦地裁に起こした訴訟で、FAAによる認可の結果「多くの種(しゅ)にとって不可欠な生息地」を含む生物的に多様なエリアに「強烈な熱や騒音、光」を放つ打ち上げが、何度も行えるようになったと主張。被害を受ける対象には、南テキサスの先住民カリーゾ・コメクルド族の間で神聖なものとされている土地や生物も含まれるとしている。
原告によると、ボカチカ周辺では過去5年に少なくとも8回の爆発が起きているという。
スターシップのブースター「スーパーヘビー」はこれまでに開発された最も強力なロケットで、打ち上げ時には約7600トンの推力を生む。燃料には液化メタンを最大3700トン使う。
マスクは昨年、スターシップの打ち上げ費用は2〜3年の間1000万ドル(約13億8000万円)足らずになるとの見積もりを示している。
初回の打ち上げは軌道には到達できなかったが、スペースXは「今後の打ち上げに向けて貴重な情報を得られる」として成功だったとの認識を示している。
(forbes.com 原文)