音楽プロデューサーとしては、オーディション企画「THE FIRST」を主催。7人組ボーイズグループ「BE:FIRST」の生みの親としても注目を集めている。
経営者、音楽プロデューサーとして腕を振るう彼のマネジメント論とは。3月30日に著書「マネジメントのはなし。」(日経BP)を上梓したSKY-HIに、話を聞いた。
前編>音楽業界の「劇薬」に。SKY-HIが起業家になった理由
トップダウンでもそれを感じさせない組織が理想
——起業家として、目標とする人物はいますか。勇気をもらった経営者という意味では、ヒップホップ界の革命家とも言われるラッセル・シモンズさんや、エイベックス創業者の松浦(勝人)さんです。「自分の好きな音楽の会社を作って大きくする」なんて、言ってしまえば自分のエゴ。それを社会的責任も伴う一大経済圏にまで押し上げたことに対しての尊敬は大きいです。
好きな曲を聞いたら、人に言いたくなるじゃないですか。それの延長線にあるのが、学生ながらにプロモーターとして活躍しDef Jam Recordingsを立ち上げたラッセル・シモンズや、貸しレコード店のアルバイトから起業したエイベックスの松浦さんがやられたこと。音楽ファンとしてリスペクトしていますし、夢があることだなと思っています。
昔、松浦さんにたまたまお会いしたときに、僕はレコード屋さんに行った帰りだったのでアナログレコードを持っていたんです。松浦さんがそれを見た瞬間に目の色を変えて「お前、まだこんなの買ってるんだ」って、慣れた手つきでジャケットからレコード盤を取り出して傷を見始めました。その時「俺こんなんばっかりやってるな」っておっしゃったのが、ずっと心に残っています。そんな、いつまでも音楽を愛する心を忘れない経営者になりたいですね。
——理想の経営者像はありますか。
理想の経営者像に既存の人物を当てはめるのは危険な気がするので、それは控えておきたいのですが……ただ、まずはスタッフたちに「うちの社長はすごく自由に、楽しそうにやっているな」と思ってもらえている状態が会社にとっていいのかなと最近は思っています。
「明るく仲良く元気よく」みたいな小学生の標語的な世界観を人間として持っていたくて、それが社風になっていくといいなと思っています。同時に、実際には組織なのでピラミッド型のトップダウンはあるんですけど、楽しいという空気を充満させる事で、それを極力ストレスに感じない状況をつくりたいです。
「THE FIRST」のときには、オーディションの参加者に、僕に対して「タメ語を使ってもらう」という裏プロジェクトも進めていました。実際にショウタ(現Aile The Shota)とルイ(現BMSGトレーニー)の2人が成功したんですが、それくらいの距離感になれるのを目指しています。