新卒でファーストリテイリンググループのジーユーに入社し、店舗運営を経験。そこで学んだノウハウを生かして、社内体制の改革や新規事業の立ち上げに挑み、ハシモトの新たな可能性を拓こうとしている。
ランドセル市場の規模は約507億円(推定)にのぼり、少子化が進む中でも堅調に拡大している。その要因のひとつには価格の上昇があり、平均価格は2022年で5万6425円(ランドセル工業会)。主な購入者は子の祖父母層だ。
ただ、価格の上昇は今後鈍化する可能性が高く、少子高齢化が進む中でランドセルメーカーがどう生き残るのかは重要な課題だ。2人の姉とともにハシモトの舵取りをする、3代目社長の頭の中は——。
——橋本家の末っ子長男として生まれた橋本昌樹さん。学生時代から家業を継ぐことを考えていたのでしょうか。
実は、大学時代はサークルやアルバイトに明け暮れていて、就活の時期になっても「自分はこれがやりたい」と明確な夢を持てずにいました。
そんな切羽詰まった状況でしたので、父に「ハシモトに入れてほしい」とお願いしたんです。でも、断られてしまいました。「まだお前が(社会に出ていないので)どういう人間かわからないのに、会社に入れるわけにはいかない。入りたいなら外で3年間働いてみろ」と。
そこで、ハシモトと同じSPA業態の企業を狙って就職活動を続け、2014年にジーユーに入社しました。
父の言葉どおり3年務める予定だったのですが、2年目の終わりごろに「戻って来い」と言われました。ジーユーで異動の話が持ち上がり、月商規模・人員ともにその時いた店舗の3~4倍の店に移るかも、というタイミングでした。父は「そこに異動したら仕事が楽しくなって、富山に戻って来なくなるだろう」と……。
肩書だけの「課長」だった
——2017年にハシモトに入社。まずはどんなことに取り組みましたか。入社時に肩書こそ「課長」をいただきましたが、所属部署も部下もない不思議な状態で。何をすればいいかわからないので、父に聞いたら「そんなことを俺に聞くな」と言われる、前途多難なスタートでした。
そこでまずはランドセルづくりを一通り学ぼうと考えて、工場に通って職人さんやパートさんにランドセルづくりを教わりました。売り物にはならないレベルですが、1人でランドセルをつくることができるようになりました。