教育

2023.05.08

慶應とREADYFORが業務提携 「ALS克服に向けた研究」を加速

プレスリリースより

クラウドファンディング大手のREADYFORが、大学との業務提携を加速している。同社にはこれまで大学約60校との業務提携実績があり、研究・教育施設・学生活動などに関するプロジェクトで約19億円の資金を集めてきた。そこに4月26日、慶應義塾が加わった。同大学はクラウドファンディングを通じ、研究成果の社会実装などを進め、イノベーションの創出を目指す。

提携後の第一号プロジェクトは、同大学医学部 生理学教室 岡野栄之教授を実行者とする「基礎・臨床融合による神経難病研究:ALS克服に向けた研究の加速を」。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめ神経変性疾患の根本的な病態の解明と、治療法開発に向けた研究費を集めることを目的とし、同日9時に寄付募集がスタートした。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せていく病気で、筋肉を動かすための信号を伝える神経(運動ニューロン)の働きが低下することによって発症。国内には約1万人の患者がいる。現在の治療法は進行を遅らせるための薬や、症状をやわらげるための対症療法が中心で、根本的な治療法は存在していない。すでに国内で承認されている薬剤はあるが、その効果は限定的で、根本的な病態の解明とさらなる治療薬の開発が急務とされている。

そうしたなか岡野教授らチームは、 家族性ALS患者由来のiPS細胞をもとに、すでに開発されている薬剤から、ALSを抑制する薬剤を探索(=iPS細胞創薬)。結果、ロピニロール塩酸塩(抗パーキンソン病薬としてすでに承認されている薬)を、新たなALS治療薬の候補として同定した。

それから直ちに基礎臨床部門が一体となり、20名のALS患者を対象に、ロピニロール塩酸塩の医師主導治験(ROPALS試験)を進めた結果、ALS患者に対し、安全かつ効果的な治療法である可能性が示唆されたという(論文投稿中)。

研究成果は世界的に注目される一方で、ロピニロール塩酸塩によって体内でどのような変化が起きているのか、ロピニロール塩酸塩の効果を事前に予測するためのバイオマーカー(※)についてなど、ROPALS試験の結果として課題や疑問が残る。

それらの解消に必要な同プロジェクトの目標金額は3000万円で、寄付受付期間は6月23日23時まで。進捗はプロジェクト開始から約1週間後の5月2日正午現在で、寄付総額384万円、達成率12%となっている。

2023年以降だけでも、READYFORは他にも国際基督教大学や北海道大学、早稲田大学、東洋海洋大などと業務提携を開始。競合のCAMPFIREも近畿大学や法政大学などと業務提携を結んでおり、大学の研究・教育資金の調達方法としてクラウドファンディングの活用が広がっている。

※ 生体内のある状態や病気を検出、評価、予測するための物質や特徴的な状態のことを指す(例えば、腫瘍マーカー等)

プレスリリース

文 = 大柏真佑実

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