私もシンガポールに住んでいた時に、オフィスへの距離で転職をするという人に会ってびっくりしたことがある。後々、そういう人は沢山いることにも気が付いた。東京では1時間かけて通勤する人が当たり前のようにいるが、シンガポールではその感覚は30分程度で、30分を超えると遠い、さらにそれが転職理由になるという事実にかなり驚いた。
生活における仕事の位置づけや、仕事に対する価値観、議論していいこと・しないほうがいいことの違い等に国民性がでているのかもしれない。
雇用に対する不安とどう向き合うか?
日本は44%が雇用保障がない仕事には就かないと考えているというが、世界では63%にも上っている。終身雇用が当然だった過去を思えば意外にも映るが、大企業の多くが早期退職を募集したり、雇用保障のぬるま湯の功罪を見ている中では、不安定性も嫌だけれども、一概に安定がよいものだとも言い切れないのが日本なのであろう。雇用保障をどれ位するかどうかは国によって大きく異なるが、アメリカなど比較的容易に解雇できてしまう国では、景気が悪くなればなるほどより高い雇用保障を求めるという点が日本とは大きく異なる。
一方で日本と世界の差がほとんどなく、誰もが考えているのが、引退への考え方である。日本の34%、世界では32%が「仕事は生活の中で必要であり、その為に引退を遅らせている」と答えている。副業への考え方は企業側も働く人もオープンになってきている。
リンダ・グラットンの著書『ライフシフト』が発刊された2016年は、一部の人が副業をしている程度だったが、『ライフシフト2』がでた2021年にはポートフォリオワークの考え方が浸透してきていた。
世の中の大きなうねりと、人々の価値観の変化の中で、企業もリーダーも元来の価値観にとらわれず組織運営を考えていかなければならない時代である。日本と世界の差を邪念なく見てみることは、そのための大きなヒントになるはずだ。