コロナ禍の約3年間で仕事に対する人々の価値観や意識は大きく変わった。若者中心に労働とプライベートのワークライフバランスを重視する傾向が世界中で強まった。
フランスでは、今年1月から始まった年金改革に反対する大規模な抗議行動がなかなか収束しない。改革は年金支給年齢の62歳から64歳への引き上げを柱とするものだが、同国で働く人の意識は大きく変わろうとしている。
シンクタンクのジャン・ジョレス財団が今年1月に出したリポートによると、2008年調査では「おカネと自由な時間とどちらを好むか」との問いに対し、「自由な時間よりも高い賃金を好む」との答えが全体の62パーセントを占めていた。ところが、昨年の調査ではこの比率が逆転、「高い賃金よりも自由な時間を求める」という回答が61パーセントに達した。
フランス人といえば、「休暇が多く、働くことが好きでない」「失業給付が手厚いため、労働意欲に欠ける」といったステレオタイプで語られがちだが、一概には言えないようだ。
5週間の有給休暇が法律で保障されているなど、大半の日本企業に比べれば、確かに休みは多いだろう。経済協力開発機構(OECD)によれば、2021年のフランスの年平均労働時間は1490時間で、OECD加盟38カ国中で30位。これに対して、日本は1607時間で同21位だ。
一方、働き方の効率を物差しにすると、状況は異なる。
「フランスの企業の生産性は高く、競争力の面で優位に立っている」と話すのは、クラウド経由でソフトウェアを提供する仏ルムアップス社のアルノー・ワイズ氏だ。同社は、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)事業者として従業員満足度向上のためのソリューション提案などを行っている。
労働生産性を示す時間当たり国内総生産(GDP、2021年時点)はフランスが66.7ドルで、OECD加盟国のうち、12位。日本は47.6ドルで同22位にとどまり、OECD加盟国平均の53.6ドルも下回る(一部推計値を含む)。