ニューヨークのエリック・アダムズ市長は、Apple(アップル)のAirTag(エアタグ)を追跡装置として使用するという斬新な自動車盗難抑止策を思いついた。
市長は4月30日の記者会見で、車の盗難被害が多い地域に暮らす市民にAirTag500個を配布すると発表した。配布するAirTagは非営利団体Association for Better New York(アソシエーション・フォー・ベター・ニューヨーク)から寄贈されたものだ。
市当局は車の所有者に対し、AirTagを車内に隠しておくよう呼び掛けている。盗難に遭った場合、持ち主のiPhoneに通知が届き、追跡が可能になる。この情報を警察に通報すれば、警察が移動中の車の位置を特定できる。
「このシンプルなデバイス、AirTagは、車内の気付かれないような場所に隠しておけば優れた追跡装置になる」とアダムズ市長は述べた。「監視するのは簡単だ。車の位置をリアルタイムで確認できる」
ニューヨークは、パンデミック後に自動車の盗難や乗っ取り被害が大幅に増加したと報告されている都市の1つ。米シンクタンクCouncil on Criminal Justice(刑事司法評議会)の報告によると、全米30都市を対象とした調査で、2022年に自動車盗難は19年比で平均59%増加した。このうち8都市では2倍以上増加し、減少したのは1都市(ボルティモア)だけだった。
ニューヨーク市のプログラムでは、AirTagの大半がブロンクス地区の市警第43分署の管区で車を所有している住民に配布される。同管区では、韓国の起亜自動車(キア)と現代自動車(ヒョンデ)の車両の盗難が548%増加しており、アダムズ市長は、車両の製造上の欠陥を悪用して充電用USBケーブルでエンジンを作動させる方法を詳しく解説したTikTok(ティックトック)の動画「キア・チャレンジ」が原因だとしている。
AirTagは、空港を利用する多くの旅行客がすでに預け入れ荷物や手荷物の位置追跡に利用している。今後は、車の収納スペースや前座席の下に設置してドライブに出かける人が増えるかもしれない。
(forbes.com 原文)