ファースト・リパブリックが前例のない預金流出で破綻した一方で、ゴールドマン・サックスはアップルの20億台のiPhoneの所有者にアピールし、消費者の金を急速に引き寄せている。この新しい預金口座はアップルのクレジットカード「Apple Card」保有者のみが利用できる。顧客は1分もかからずに直接iPhoneから口座を開設することができる。Apple Cardのデイリーキャッシュと呼ばれる利用額に応じたキャッシュバックは自動的に高利回りの口座に入る。
顧客はアップルのデジタルウォレットと統合されたダッシュボードで残高や利息を確認できる。アップルの預金口座の前は、デイリーキャッシュのキャッシュバックはiPhoneのデジタルウォレット内にある、グリーン・ドット・バンクが発行するプリペイドデジタルカードApple Cashに自動的に入金されていた。クーロン・コンサルティングは、Apple CardからApple Cashに入金される額は年間38億ドル(約5220億円)に上ると推定しており、この資金は今後、預金口座に入ることになる。アップルの高利回りの預金口座の上限は米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護上限と同じ25万ドル(約3400万円)だ。
従来型の地方銀行の多くはFRBの大幅な利上げを受けて純利ざやの確保に苦労しており、そのためアップルのFDIC保険付き預金口座の年利4.15%に匹敵する預金口座はほとんどなかった。多くのデジタル銀行がより高い利回りを提供しており、例えばダラスのテキサス・キャピタル・バンクのバスク・バンクは5月1日現在、年利4.75%の預金口座を提供している。ネオバンクのCurrent(カレント)、Varo(ヴァロ)、LendingClub(レンディングクラブ)などのフィンテックは年利2〜4.25%の高利回りを提供している。金融サービス、特に銀行業務において慣性は強力な力であるため、アップルとゴールドマンの究極の強みはそのシームレスなユーザー体験とiPhoneとの統合だろう。
(forbes.com 原文)