フィルター設置義務化を呼びかけたのは、NGOや科学者、マイクロプラスチック問題の解決に取り組む企業などが作成したホワイトペーパー(報告書)が、2023年5月に発表される「マイクロプラスチック問題に関するEUイニシアチブ」に先駆けて、欧州委員会のメンバーに配布された。
この報告書は、洗濯機にフィルターを設置することが、環境中に放出されるマイクロプラスチックを削減する上で、短期的に効果が得られる唯一の解決策だとしている。
洗濯機で衣類を洗うだけで、世界全体では毎年50万トンを超える微小な合成繊維(マイクロファイバー)が海に放出されている。また、ファストファッションの需要が高まっていることや、合成繊維の急増により、環境中に放出されるマイクロファイバーは今後もさらに増えるとみられている。
マイクロプラスチックを回収できるフィルターを開発する英メーカー「Xeros(ゼロス)」の最高科学責任者(CSO)ポール・サーヴィン博士によると、マイクロファイバーは洗濯中に大量に衣類から抜け落ち、下水処理施設に行き着くか、河川や海にそのまま流れ出てしまうという。
先進国の場合は、下水処理場でマイクロファイバーを70%から99%回収できる。しかし世界全体を見ると、処理されている下水は20%にすぎないとサーヴィン博士はインタビューで述べている。
また、多くの下水処理場では、マイクロファイバーが下水汚泥に溜まる。そして、その下水汚泥が肥料として農家に販売され、結局は環境へと戻っていくのだという。マイクロファイバーは、回収されなければ河川や海へと流れ出し、さらなる問題を引き起こす。
「人類が海へと放出しているマイクロプラスチックは毎年50万トンに上る。それが分解されるまでには、途方もなく長い年月がかかる」とサーヴィン博士は話す。
「マイクロファイバーがいったん海へと流れ出たら、それをフィルターで取り除くことはできない。マイクロファイバー対策として最も簡単なのは、洗濯機にフィルターを取りつけて、そこから先に流れ出さないよう回収することだ」