博士課程の新卒に欠けている資質とは

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文部科学省が公表した学校基本調査によると、2022年度日本の大学院博士課程修了者は1万5837人。修了者に占める就職者の割合は69.3%で、うち正社員として就職した割合は62.1%と、約6割にとどまっている。理由の一つとして、企業が博士修了者に望む資質や能力について、企業関係者と大学関係者(博士学生、教職員)との間に存在する意識の乖離があるという。

そうした中、東北大学と日本能率協会コンサルティングは4月27日、日本企業の研究開発部門や人事部門、経営企画部門を対象に、博士修了者に望む資質や能力について尋ねた調査結果を発表した(有効回答123件)。

まず、博士修了者に特に期待する資質について聞いたところ、最多が「自律的に研究開発を推進する主体性」(84.6%)。次いで「失敗を恐れず、新しいことに取り組むチャレンジ精神」(53.7%)、「学び続ける力」(39%)という結果に。

さらに、博士修了者に求める資質について、期待しているが不足している項目としては、「チームワーク・リーダーシップ・協調性」(期待33.3%、不足38.2%)が挙げられた。

調査チームは、企業側が博士修了者に対し、「いかに周囲とアクティブに関わりながら、組織の一員として業務を実施できるかという点で不足を感じているものと考えられる。(博士修了者が)専門性を持つ個人として高いパフォーマンスを発揮することはもちろん、組織が目標を達成する力を維持・向上させることを求められていると考えられる」と分析。

他にも、企業が博士修了者に特に期待する知識について聞いたところ、1位が「研究分野における高い専門知識」(73.2%)、2位「専攻分野における専門知識」(66.7%)、3位「複数の技術に関する幅広い知識」(48%)の順に。続いて博士修了者に求める知識について、期待しているが不足している項目としては、「複数の技術に関する幅広い知識」(期待48%、不足54.5%)が挙げられた。

調査チームは、「研究から新しい技術を生み出すためにはアイデアの素となる複数の技術分野の知識について知っている必要があるが、(博士修了者が持つ知識は)現状、特定の分野に偏っていると考えられる。企業が博士課程修了生に対し、自分の専門をさらに貫いて基礎研究を遂行することだけではなく、複数の技術について熟知し、結合しながら新たな研究テーマや技術・製品の創出をする役割を期待していることが考えられる」と考察した。

博士課程修了者は、日本のイノベーションや先端研究の未来を担う貴重な人材だ。今後、速やかな企業とのマッチング円滑化が期待される。

プレスリリース

文 = 大柏真佑実

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