エルドアン大統領は今後数週間、ニュースを賑わすことになるだろう。今年は先進7カ国(G7)では大きな選挙はないが、来月14日に第1回投票が予定されているトルコの大統領選挙は、さまざまな理由から国際的に重要な意義を持つ。
トルコの分岐点
民主主義と安定した経済構造という考えを重視するトルコにとって、来月の大統領選挙は決定的な分岐点となる。エルドアン大統領が勝利すれば、民主主義が弱まり、国の経済にまだ希望を抱いている人々がさじを投げる原因となるのはほぼ間違いないだろう。トルコは世俗的かつ民主的になるため、西側に倣って努力すべきだと説いた建国の父ケマル・アタチュルク初代大統領の方針を永遠に薄めてしまうかもしれない。より広い意味では、エルドアン大統領は「独裁者の後退」という命題に対する試験台だ。ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領や英国のボリス・ジョンソン元首相、米国のドナルド・トランプ前大統領のようなポピュリストは引きずり降ろされた。トルコで大統領が交代すれば、最も長く君臨したポピュリストの1人が拒絶されることになり、同国では民主主義が息を吹き返すかもしれない。
今回の選挙は地政学的にも極めて重要な意義を持つ。かつて(特に2011年の民主化運動「アラブの春」以降)、トルコは中東の安定に貢献する模範的な存在として賞賛された時期もあり、同国の外交政策の極意は「隣国との間にいさかいなし」だった。ところがトルコは現在、至る所で紛争に巻き込まれている。アゼルバイジャンとアルメニア間の紛争では身動きが取れず、リビアやシリアにも介入、イスラエルとの関係は悪化し、北大西洋条約機構(NATO)の中では最も厄介な加盟国だと批判され、ロシアとは友人のふりをした敵である。簡単に言えば、数多くの問題を抱えているというわけだ。