この「e発送サービス宛先ご指定便」の開発支援を行ったのが、モンスターラボホールディングスの日本における事業会社、モンスターラボだ。そして、日本郵政グループの日本郵政キャピタルもモンスターラボに出資した。本稿では、「もう着払い伝票はいらない? 日本郵政発、ユーザー1億2千万人向け新サービスとは」に続き、モンスターラボ、日本郵便双方の関係者から話を聞いた(なお、本記事は日本郵政キャピタルのホームページに掲載された記事「ユーザ視点の『デザイン思考』で実現した返品サービスの利便性向上」を加筆・改訂したものである)。
「クラウド」で「アジャイル」で「バックログ」?
インタビュアー(曽根康司、以下「──」):今回の「e発送サービス宛先ご指定便」では、サーバに「クラウド」環境を用い、開発は「アジャイル」型、タスクの管理には外部のSaaSサービスである「バックログ」を使ったと聞きました。随分とモダンな仕組みを使っている印象を受けましたが、それらを選択された理由、導入にあたっての社内でのハードルについてお教えください。モンスターラボホールディングス 梶山 雅生:「クラウド」を選んだ理由は明確です。システムの処理能力を可変に対応できる「クラウド」を選ぶ必要性がありました。さきほどの人手不足の対策とも関係します。
日本郵便の顧客は日本の人口である1億2千万人、日本郵政グループは24万人のスタッフを抱え、郵便局は全国に2万4千箇所あります。サービスが利用された際の広がりの可能性があまり大きく、システムの処理能力の限界を精緻に見立てることは、あまりに困難だったからです。
日本郵便 住本 裕一:処理能力の限界を精緻に見立てることの困難さは、我々も他のプロジェクトで経験していましたので、クラウドの提案は我々にも合理的でした。日本郵便のシステム統制でもクラウド利用の制度が整備されていたこともあり、スムーズに決定することが出来ました。